谷健二監督の最新映画「その恋、自販機で買えますか?」(10月1日公開)の完成披露上映会が15日に東京・池袋アニメイトシアターで行われた。漫画原作のボーイズラブ作品で、社会人男性2人の淡い恋物語を描く。ひかれあう2人を演じるダブル主演の松田凌(31)と田鶴翔吾(31)が取材に応じ、作品に込めた思いを語った。

上映会には満席となる約200人の観客が駆けつけた。松田は「やっと皆さまに見ていただけるタイミングがきてうれしいです」と語り「同性愛とかそうしたものが世の中的にオープンになってきている中で、この作品もセンシティブな部分もありますけど、人に恋をするという純粋な気持ちや、それが着実に実っていく様子、自分が感じた温かい気持ちを見た方にも届けられたらなと思っています」と話した。

田鶴はオムニバス作品以外では映画初出演となる。「みなさんの笑顔を見て、よかったのかなと。公開が楽しみになりました」と笑顔をみせ「こういう作品は初めてで、新しい世界を知ることができました。学生時代に戻ったような、ウキウキとした気持ちになれる作品ですし、自分の人生の中でも新しいことに出会えたなと感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。

松田は原作者である吉井ハルアキ氏からの推薦、田鶴は「原作を見てイメージが浮かんだ」という谷監督からの“推し”などがあり、オファーを受けた。撮影前には松田から田鶴に声をかけ、2人きりで作品に抱いた思いなどを語り合って親交を深めたという。

今作の撮影期間は約5日間のスケジュール。松田は「撮影期間がそんなにあるわけではないですし、主に2人で会話するシーンも多い。第一印象から距離感を詰めていく時間がもったいないなと思って誘いました。翔吾はいいやつで真摯(しんし)ですし、相談し合いながらできるなとお互いが確かめられました」。

田鶴も「顔合わせして本読み後、ほやほやで2人でお茶をして。少し背負いすぎていた部分が軽くなりました。プラスな気持ちが大きくなりましたし、凌くんはすごくいい人だなと。これは大きかったです」と振り返った。

ともに兵庫県出身という共通点もあり、すぐに打ち解けた。効果は撮影にもしっかりと現れており、谷監督は「通常よりも多い(台本で)8ページ分くらいのシーンもありましたけど、2人は息も合っていて全く間違えないからすごいなと。これまで見てきたいろんな人の中でも、あんなに間違えない人は見たことがなかった」とたたえた。

2人も谷監督の意思をしっかりと表現した。松田は「監督は、こうしてみようというアイデアやビジョンがしっかりされていたのはもちろん、クレバーだなと感じたのは、現場でいらないなと感じた部分をすぐに切っていく状況判断。演者としては助かりますし、ちゃんとディレクションしてくださりますので、全てが的確に現場が進んでいきました」。

田鶴も「撮影に入る前のビジョンがしっかりと決まっていたので、他に考えないといけないことがなくて、すごく集中できました。こうした作品に初参加で、個人的にすごく勉強になりましたし、撮影も楽しかったです」と語った。

近年増えつつあるボーイズラブ作品。2人はともに学生時代に友人から打ち明けられた経験があったという。松田は上映会後のトークイベントの中で「仲のいい子だったんですけど、その時は滝のように涙していて。ずっと誰にも話せなかったり、まだその時は親御さんにも言えてない時で。打ち明けられた時のこともずっと覚えていましたし、今回こうしたシーンを演じる時にすごく責任を感じました」と思いを明かしていた。

まだ原作も続いている作品。谷監督はトークイベントで「今回、素晴らしい役者さんに出会えましたし、この作品の続編も考えられますね」と語り「次は温泉に行くはずなので、ここのロケ地良いですとか教えてくれれば検討します」と呼びかけていた。

松田は「僕は『その恋、自販機で買えますか?』というタイトルが大好きで。みなさんに感じていただけることがとても多い作品ですし、公開時期には自販機から温かい飲み物も出てきます。それと同じように、この映画を見て温かい気分になっていただけたら」と笑顔で話した。

田鶴も「先ほども言った通り、学生時代のドキドキやウキウキする気持ちを思い出させてくれますし、それぞれの思い出がフラッシュバックすると思います。僕たちの恋模様をぜひ応援してくれたらうれしいです」とPRした。

「その恋、自販機で買えますか?」は10月1日から東京・池袋アニメイトシアターで公開予定。上映会ではシンガー・ソングライターのヒグチアイが主題歌「自販機の恋」を歌うことも発表された。