モデルでエッセイストの小林千花(27)を、4年ぶりにインタビューした。前回は東京・新国立劇場の舞台「MOTHER マザー ~特攻の母 島濱トメ物語~」で女優デビューする時だった。

今回は飛行機のファーストクラスをイメージしたカプセルホテルを運営する、株式会社ファーストキャビンHDの取締役としてだ。モデル、エッセイストの仕事は続けながら、広報、PRの業務を担当している。

姉が現役の男役であることから宝塚を目指したこともあったが、女優への思いを封印してホテル経営のノウハウを学びながら実践していく。曽祖父が東京の老舗「丸ノ内ホテル」の創業者という一族に生まれた。明治学院大在学中から読者モデルをしながら、ホテルや旅のエッセイストとして活動してきた。

自らの運命のDNAに従った小林だが、将来の夢を聞いて驚かされた。「私の夢は、湖のほとりに15室くらいのスモールラグジュアリーホテルを作ること」という言葉を聞いても、沖縄へキャンペーンの8000円台のチケットで飛び、地域クーポンを使って1泊3000円で泊まっている身ではピンと来ない。 ラグジュアリーホテル? 今はなき赤プリのスイートでは、よくパジャマパーティーを開いたけど…。

理解しかねているこちらの状況を見て、丁寧に説明してくれた。

「1泊50万円以上の審査制のホテルを作りたい。インバウンド(訪日客)でやって来る、海外の人がお客さまになりますね」

海外のお金持ちを相手に、一部を不動産として販売する計画も明かしてくれた。でも、JRの初乗り料金140円で移動して、駅売り1部160円の日刊スポーツで記事を書いてる身には夢物語のような話だ。

分かったふりをしながら、さらに話を進めた。すると、自らのラグジュアリーホテルを建てる候補地とし栃木の中禅寺湖を挙げた。

これで一挙に壁が取り払われた。宇都宮の支局に勤務経験のある記者にとって、勝手知ったる場所。日光、そして青木ケ原の素晴らしさはインバウンドのお客さまにはピッタリだ。

とかく、北関東3県はさまざまな「不人気ランキング」の上位をにぎわす。だが、成田に降り立つ外国からのお友達に、京都まで新幹線で行かなくても、古き良きジャパンを味わっていただける。温泉も湯量たっぷり。夏だったら、奥地へと尾瀬の方へ足を延ばしてもニッコウキスゲが美しい。

一時は宇都宮、日光方面にドライブがてら、よく通っていたが、このところご無沙汰している。車の試乗会で、一緒に青木ケ原を走って写真を撮り合った同僚も退社して、そして亡くなってしまった。

コロナ明けで、飛行機で行く遠い旅の事ばかり思う日々が続いていた。もっと近くにある、素晴らしい場所を思い出させてくれた小林の取材だった。【小谷野俊哉】