バスケットボール男子W杯が25日、沖縄などで開幕する。日本代表チームのキーマンとなるのが、米NBAで活躍する渡辺雄太選手(28=サンズ)だ。大会にかける思いを最も近くで見てきた妻、久慈暁子さん(29=元フジテレビ)が日刊スポーツの取材に応じ、「素晴らしいチームでプレーすることを楽しんでほしい」とエールを送った。

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◆日の丸を背負う「覚悟」

昨年5月に結婚し、米ニューヨークに移り住んで夫の試合に声援を送り続けてきた。世界最高峰リーグNBAの真剣勝負を目の当たりにしてきたが、W杯を前に、また違った覚悟を夫から感じているという。

「06年以来の自国開催というまたとない機会。日本代表として、日の丸を背負う覚悟や責任感、熱意を、彼からより一層、ひしひしと感じています」

21年の東京五輪で日本は1次リーグ敗退。主将として臨んだ渡辺選手は悔しさで涙した。何より、コロナ禍による無観客開催のため、自国のファンに生のプレーや熱気を見せることができなかった。残念だった思いを聞いているだけに「たくさんの日本の人に見てもらえることはどんなにうれしいだろうと思います。NBAを観戦していても、ホームの声援の力って本当に大きいんですよ」。

自身も、先ごろ有明アリーナで行われた国際強化試合3試合に足を運び、その迫力を実感したばかり。「『ニッポン!!』というかけ声が響き渡って、選手たちにどれだけ力になることかと。他国でやるのとは違う一体感に感動しました」と話す。

強化試合のアンゴラ戦(15日)で右足首を捻挫し、列島をヒヤリとさせた。大会にはぶっつけ本番で臨むことになる。けがの具合はチーム関係者しか知り得ないが、妻として「すぐにちゃんと立って移動していたことに安心しました」。そもそも接触の多い競技であり「これまでけがをしても彼からネガティブな話を聞いたことがない」と振り返る。「メンタル強いなっていつも思います。今回もチームのために頑張ってくれると思う」と確信している。

◆2人でNYを観光したのは1度きり

渡辺選手と最初に出会ったのは、前回のW杯があった19年。大会に臨む意気込みを「めざましテレビ」のスポーツキャスターとして取材した。「こんな背が高い人がいるんだというのが第一印象。すごく優しそうだなって」。この時は取材対象として普通に仕事を終えたが、半年後に共通の知り合いを通じてLINEが届き、その後、交際がスタート。22年5月に結婚した。

この時はブルックリンに本拠を置くネッツの所属。せっかくのニューヨーク暮らしだったが、観光とは無縁の新婚生活だったと笑顔で話す。夫はチームから「練習しすぎだから帰れ」と言われるほど競技にストイックな人。「バスケットボールのためにご飯食べて、寝て、トレーニングして、昼寝をする。街に出て遊ぶなんて絶対にあり得ない(笑い)。あまりにもどこにも行かないので、『せめてブルックリン・ブリッジは行った方がいいよ』と説得して、シーズン後に実現しました。NYの観光地に一緒に行ったのは1度きりです」。

栄養管理は専属のシェフが行っているが、シェフ不在の時に備え、スポーツ栄養プランナーの資格も取得した。「どういう食材の組み合わせがいいかとか、試合前はどういうものを食べたらいいかとか。ニンジンが苦手なので、分からないくらい細かくして料理に入れたりしますが(笑い)、そんなことをしなくても、その食材にどういう効果があるかを伝えれば、苦手なものでも競技のために絶対食べますね」。

◆今を目に焼き付けたい

バスケットボール一筋の夫の横で、「私が楽しくいる」ことを大事にしたいという。「バスケットボールのことはよく分からないのでほかの話ばかりしていますが(笑い)、私が明るく楽しくいることが気分転換になったら」。試合にも、できる限り応援しに行っている。「けがをしないか、見に行くのが怖い時もありますが、NBAでプレーできているという今をちゃんと目に焼き付けたい。それは、今回のW杯も同じです」。

日本の勝利への思いと同時に、夫から強く伝わってくるのは、「日本のバスケを盛り上げたい」という思いという。「今回も、オフで帰国してから子どもたちにバスケットボール教室を開いたり、NBAで学んだことをチームに伝えたり。野球やサッカーのように、まだまだ発展してほしいという気持ちなのだと思います」。

◆日本代表チームの魅力は「チームワーク」

日本代表チームの魅力を聞くと「チームワーク」を挙げた。「バスケをやったことがない私が言えることは限られますが、有明で3試合見てそう感じました。誰ひとり手を抜いていないし、本当に一生懸命プレーしていて、誰かが決めると学生みたいに大喜びして。違うチームから集まった選手たちがあれだけ仲良く高め合っているのってすごいなって」。

大事な初戦は、世界ランキング11位の強豪ドイツが相手。「チームワークで、いい流れをつかんでほしい」と祈っている。渡辺選手へのエールをお願いすると、「いつも頑張っているので、『頑張って』とは言わないんですよ」と明るい。「とにかく楽しんでほしいです。日本でプレーすること、素晴らしい代表の皆さんとプレーすること、それを日本の皆さんに見せるということを、楽しんでほしいです」。【梅田恵子】

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◆久慈暁子(くじ・あきこ)1994年(平6)7月13日、岩手県生まれ。学生時代、14年からモデル活動を経て卒業後、17年、フジテレビに入社し、同年「クジパン」のMCに抜てきされ話題に。「めざましテレビ」などのレギュラーを務め、22年4月に同局退社。同5月に米プロバスケットボール(NBA)の渡辺雄太と結婚。現在フリーアナウンサー、タレントとして活動中。スポーツ栄養プランナーのほか、日本習字8段など資格多数。166センチ、血液型O。

◆渡辺雄太(わたなべ・ゆうた) 1994年(平6)10月13日、横浜市生まれ、香川県三木町出身。香川・尽誠学園高では全国高校選抜優勝大会(現・全国高校選手権)で2年連続準優勝。米ジョージワシントン大卒業後にNBAグリズリーズとツーウェー契約を交わし、18年10月NBAデビュー。ラプターズ、ネッツを経て、23年にサンズに移籍。16歳だった11年4月に日本代表に初選出され、19年中国W杯、21年東京五輪などに出場。