ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(19年に死去)の性加害問題を巡り、同事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」(座長・林真琴前検事総長)が29日、都内で会見を行った。性加害の事実が認められたと報告し、藤島ジュリー景子社長(57)の辞任を要求した。提言を受け、ジュリー氏の辞任が決定的となったことも分かった。

 

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100人以上の報道陣が集まった会場で、林氏はジャニー氏の性加害について「1970年代前半から2010年代半ばまでの長期間にわたり、多数のジャニーズJr.に対し、広範に性加害を繰り返していたことが認められました」と報告した。23人の被害者らや、ジャニーズ事務所関係者ら18人をヒアリングしたという。「物証がない事案ですが、多くの方の証言から(性加害が)真実と思われるということで、判断しました」と伝えた。

林氏は問題の背景として1962年(昭37)の創業からジャニー氏、ジャニー氏の姉でジュリー氏の母の藤島メリー泰子元名誉会長(21年死去)、ジュリー氏と続く「同族経営」の弊害を指摘。「ジュリー氏がトップのままでは、今後社員や職員の意識を根底から変えて再出発することは極めて困難と考える。ジャニーズ事務所が解体的出直しをするため、経営トップたる代表取締役社長を交代する必要がある。ジュリー氏の代表取締役社長の辞任を求める」と述べた。

ジャニーズ事務所はこの日、「提言および会見内容を真摯(しんし)に受け止め、今後に予定をしております弊社による記者会見にて、その取り組みを誠心誠意ご説明させていただく所存でございます」とコメントした。広告代理店関係者によると、ジュリー氏の辞任は決定的という。

特別チームは、性加害が続いた原因として「ジャニー氏の性嗜好異常」「メリー氏による放置と隠蔽」「ジャニーズ事務所の不作為」「被害の潜在化を招いた関係性における権力構造」の4つを挙げた。また再発防止策としてガバナンスの強化も提言。被害者救済措置の構築を求め「被害者の真の救済を図るために、時効が成立している者についても救済措置の対象とすべきだ」とした。

今年3月、BBCがジャニー氏の性加害疑惑について報道。4月に元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが会見して被害を訴えた。5月にジュリー氏が謝罪する動画を発表したが、性加害の事実については「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」とし、「当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではない」と発表していた。

林氏は「単に一企業として再出発するというだけでなく、ジャニーズ事務所が率先して積極的にエンターテインメント業界全体を変えていくという姿勢で臨んでほしい」と訴えた。「日本を代表する芸能プロダクションとして、自ら先頭に立って日本のエンターテインメント業界を変えていく役割を果たすことを期待します」と伝えた。

 

◆外部専門家による再発防止特別チーム ジャニーズ事務所が「今回の問題は、弊社におけるガバナンス上の課題を浮き彫りにした」とし、5月26日に組成。元検事総長で弁護士の林眞琴氏、精神科医の飛鳥井望氏、臨床心理士の齋藤梓氏の3人。被害申告をした元所属タレントらにヒアリングを実施した。林氏によると、この日の調査報告書と提言をもってチームとしての役目を終えたという。

 

◇性加害問題の経緯◇

▼1999年 週刊文春がジャニー氏によるジャニーズ事務所所属タレントの少年へのわいせつ行為を報じる記事を掲載

▼2002年 記事で名誉を傷つけられたとして同事務所と喜多川氏が起こした訴訟で、東京地裁が文春側に計880万円の賠償を命じる

▼03年 東京高裁が賠償額を120万円に変更。記事の真実性を認める

▼04年 最高裁が同事務所側の上告を退ける。東京高裁判決が確定

▼19年 ジャニー氏が死去。87歳。ジュリー氏が社長に就任。

▼今年3月7日 BBCがジャニー氏の性加害疑惑について報道

▼4月12日 カウアン・オカモトさんが被害者として実名顔出しで会見

▼5月14日 ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が謝罪する動画と文書を公開

▼同16日 立憲民主党が国会内でカウアン・オカモトさんと橋田康さんにヒアリング

▼同21日 ジャニーズ最年長タレント東山紀之が番組で「ジャニーズという名前を存続させるべきなのかを含め、外部の方とともに全てを新しくし、透明性をもってこの問題に取り組んでいかなければならない」などと発言し謝罪

▼同26日 ジャニーズ事務所が対応策を発表。WBC侍ジャパンのヘッドコーチ白井一幸氏ら3人の「社外取締役の就任」、「心のケア相談窓口の開設」、「外部専門家による再発防止特別チームの設置」の3点を報告

▼6月26日 元ジャニーズJr.の二本樹顕理氏と中村一也氏が発起人となり「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が発足

▼8月4日 外部専門家による再発防止特別チームが調査結果を踏まえた提言を8月末頃に行う見込みと発表。ジャニーズ事務所も「本特別チームの提言を受けて、できるだけ早く、今後の弊社の取り組みなどについて記者会見にてご説明させていただく予定」とした

▼同日 国連人権理事会作業部会が問題を調査し会見。政府主体の救済を求める。来年6月、同理事会に最終報告書を提出する予定