NHK「ニュースウオッチ9」が放送した新型コロナ関連のインタビュー動画について5日、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会(小町谷育子委員長)が「放送倫理違反があった」とする意見書を公表したことを受け、NHKが「真摯(しんし)に受け止めます」とのコメントを発表した。

審議入りしていたのは、番組が5月15日に放送した「新型コロナ5類移行一週間・戻りつつある日常」と題した短いVTR。新型コロナワクチン接種後に家族を亡くした遺族をインタビューしたにもかかわらず、ワクチンについて触れず、コロナ感染により亡くなったと受け取れるように編集したとして抗議を受けていた。

放送倫理検証委員会は意見書で「担当者は、コロナウイルスに感染して亡くなった人と、ワクチン接種後に亡くなった人の違いは分かっていたものの、広い意味でコロナ禍で亡くなった人に変わりはないだろうと考えた、と説明している。ニュース報道の現場を担う者としてあり得ない、不適切なものだった」と指摘。「人物の属性を事実と異なる形で伝えるという、ニュース報道の基本を大きく踏み外したもの」とした。

さらに、おろそかにされた取材の基本、不十分だった取材サポート、働かなかったチェック機能、「人の死」をめぐる情報を扱う判断の軽さを断じた。

NHKのコメントは次の通り。

「事実を正確に伝えるというニュース・報道番組としての基本を逸脱し、視聴者の信頼を裏切り、遺族の心情を大きく傷つける結果を招いたという指摘を真摯に受け止めます。取材・制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする基本的な姿勢を再確認し、ジャーナリズム教育の徹底など現在進めている再発防止策を着実に実行し、視聴者の信頼に応えられる番組を取材・制作してまいります」