NEWS加藤シゲアキ(36)の小説家としての最新作「なれのはて」が、第170回直木賞の受賞を逃した。17日に都内で選考会が行われ、受賞作が発表された。河崎秋子氏の「ともぐい」と、万城目学氏の「八月の御所グラウンド」が受賞した。

選考委員の林真理子氏は、「加藤シゲアキさんについては、非常に成長がある、という意見が多数寄せられました」と明かした。「ただ、少し登場人物が多く、詰め込みすぎだったのではないか、という意見もございました」と説明。「しかし加藤さんは本当に1作ごとに成長を見せている。次作が楽しみだ、これからもお書きいただきたい、というお声がございました」と伝えた。

今回の候補作は加藤の「なれのはて」、河崎氏の「ともぐい」、嶋津輝氏の「襷がけの二人」、万城目氏の「八月の御所グラウンド」、宮内悠介氏の「ラウリ・クースクを探して」、村木嵐氏の「まいまいつぶろ」の6作だった。選考委員は浅田次郎氏、角田光代氏、京極夏彦氏、桐野夏生氏、高村薫氏、林真理子氏、三浦しをん氏、宮部みゆき氏。

「なれのはて」は東京、秋田、新潟が舞台。終戦前夜に起きた秋田・土崎空襲をきっかけに、悲劇と後悔が背中合わせの人間の業(ごう)と向き合いつつ、力強く生き抜こうとする人びとの姿を、1枚の絵から始まるミステリーを通じて描く。構想から3年を経て完成した447ページ、38万字超の大作で、累計10万部突破のベストセラーだ。

加藤は99年にジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)入り。12年に「ピンクとグレー」で小説家デビュー。アイドル活動と並行して執筆を重ね、これまで長編や短編小説、エッセーなどを多数発表してきた。20年刊行の前作「オルタネート」は吉川英治文学新人賞や高校生直木賞などを受賞し、直木賞でも候補に。「なれのはて」で2作連続の候補入りとなっていた。

◆直木賞 「文芸春秋」を創刊した菊池寛が、前年に43歳で死去した直木三十五を記念し1935年に創設。大衆文学の作家が対象で、同時に誕生した芥川賞は純文学の新進作家が対象となる。選考委員会は年2回。正賞は時計、副賞100万円。第1回受賞者は川口松太郎。現在の選考委員は浅田次郎氏、角田光代氏、京極夏彦氏、桐野夏生氏、高村薫氏、林真理子氏、三浦しをん氏、宮部みゆき氏。