紙切り芸の第一人者として知られる3代目林家正楽(はやしや・しょうらく、本名・秋元真=あきもと・まこと)さんが21日、死去した。76歳。26日、落語協会が発表した。葬儀は近親者のみで執り行われた。

関係者によると、自宅で倒れ、都内の病院で亡くなったという。最後の寄席出演は亡くなる2日前の1月19日、東京・新宿の末廣亭だった。

寄席紙切り芸の象徴的存在。切る方向に体を揺らしながら紙に淡々とハサミを入れていき、一筆書きのように切れ目なく仕上げて額に入れて披露する技で、人物から物体まであざやかに仕上げた。客のさまざまなリクエストに応じることでも有名で、海外の客や学校訪問などでも絶大な人気を得た。

1966年(昭41)に2代目林家正楽に入門し芸名「一楽」を名乗った。1988年に(昭63)年に「林家小正楽」を襲名。2000年(平12)年9月に3代目「林家正楽」を襲名した。20年には「芸術選奨 文部科学大臣賞(大衆芸能部門)」を受賞した。

落語協会の柳亭市馬会長は「正楽さんは、誰よりも寄席が好きで、寄席を大切にする芸人でした。まず一年中、どこかの寄席に、必ずと言っていいくらい、出演していました。今年の正月興行もいつも通り、お客様の注文に、見事に応えていたのですが、亡くなる前日、急に休まれたので、普段そういう人ではないだけに、余程調子が悪いのでは?と心配していましたが、こんなに早く、お別れする事になろうとは、夢にも思いませんでした」と突然の別れに驚いた。「正楽さんに、もう会えないのか、あの芸を見られないのかと思うと、とても辛い。悲しくて、寂しくて、どうかなってしまいそうです。協会員も、いや正楽さんを知る人は皆、そうなると思います」と痛恨の思いを記し「今はただ、一緒に高座をつとめられた喜びと、楽しかった思い出を噛みしめつつ、ご冥福をお祈り申し上げるだけです。三代目林家正楽師匠、長い間、本当に長い間、ありがとうございました。お疲れさまでした。好きな焼酎のお湯割り、ゆっくりやって下さい。またどこかで、会いましょう」とコメントを寄せた。