紙切り芸の第一人者として知られる林家正楽(はやしや・しょうらく)さん(本名秋元真=あきもと・まこと)が21日午前6時29分に死去したことを26日、落語協会が発表した。76歳。葬儀は近親者のみで執り行われた。最後の高座は、亡くなる前日20日の千葉・船橋市での落語会。同協会によると、寄席出演の最後は19日の新宿・末廣亭。

20日の落語会では、公演前に体調不良に見舞われ、足がむくんだ様子だったという。弟子たちに支えられて舞台に上がり、宝船、大谷翔平、龍、富士山といった7題に応じて約30分間、紙切りを披露した。自宅までタクシーで帰宅し休養したが、同日夜の末廣亭は休演した。翌日、倒れているところを家族が見つけ、都内病院に救急搬送されたが、帰らぬ人となった。

寄席紙切り芸の象徴的存在。体を揺らしながら淡々とハサミを入れ、トークを交えながら、一筆書きのように切れ目ない作品を仕上げた。人物、物体、時事ネタなどさまざまな注文を受け、難題も決して断ることはなかった。あざやかな芸に客席からは感嘆の声が上がった。

また、正楽さんは、本年度の「第40回浅草芸能大賞」の大賞にも選ばれていた。3月16日には、浅草公会堂で授賞式に出席予定だった。主催する台東区芸術文化財団によると、大賞受賞は変わらず授賞式も行う。公式サイトでは弟子の代理出席が告知された。

落語界では「次の人間国宝」との声が高まるほどの磨きぬかれた名人芸だった。落語協会の柳亭市馬会長は「悲しくて、寂しくて、どうかなってしまいそうです」とコメントした。