フジテレビの親会社、フジ・メディア・ホールディングス(FMH)の第84回定時株主総会が25日に行われた。
40年以上にわたったフジテレビを中心とするメディアグループを引っ張ってきた日枝久取締役相談役(87)が退任。金光修社長(70)も退任して、清水賢治社長(64)を中心として新しい体制がスタートした。
期待は何と言っても、FMHとフジテレビの常務取締役に就任した若生伸子TVer社長(63)だ。30日で3年間に及ぶTVer社長を退任し、フジテレビに専念して立て直しに本格的に取り組む。
若生常務と初めて会ったのは2017年7月に広報室長になった時だ。敏腕営業ウーマンとして鳴らして、マスコミ対応の最前線に乗り込んできた。
当時、ライバル日本テレビで営業を担当したことのある友人に若生常務のことを聞いてみた。「フジテレビは若生さんが担当になった。気をつけろ」。友人が携帯電話会社を担当していた時に、仲のいい広告代理店の担当者から言われた言葉だという。広告代理店筋をガッチリ固めていても、クライアントの会社から切り崩す腕は超一流だったという。
トラブルが起きれば、朝一でクライアントに出向き、宣伝部長が出社するところをロビーでつかまえて頭を下げる。土下座も辞さない“土下座の若生”の異名を取っていたという。ライバル日テレの営業マンからだから話半分に聞いても、まるで局は違うがTBS「半沢直樹」の世界のようなかっこよさだ。逆にライバル局のメディアに登場する営業ウーマンのことを質問すると「あれは日テレ顔ね」と、クールに分析してくれた。
実際に広報でも敏腕ぶりを発揮した。伸子という名前を、あろうことか延子と書いてしまったことがあるのだが、すぐに厳しくチェックされて訂正させられた。土下座は要求されずにすんだが(笑い)。やぶ蛇になるので詳しくは書かないが、以前、フジテレビの人事をネットニュースで報じて間違えたことがある。すぐに取り消したのだが、しっかりとコピーにとって、ことあるごとに持ち出された。記者として若生常務に育てていただいた。
18年4月に広報局長、同年6月にはフジテレビでは女性初の執行役員になった。21年6月には事業局に異動になり、22年6月にTVerの社長に就任。就任3カ月たった同9月にインタビューしたのだが、それまでは民放各局の「見逃し配信」のイメージだったTVerを変革させていた。オリジナルのコンテンツを作り、TVerを通じて「同時配信」への流れを作っていた。TVer関係者には「若生さんはフジテレビの社長になる人だから大切にね」とお願いしていたのだが、方向性は間違いなかった。
一連の不祥事によるスポンサー離れで、FMHの25年3月期連結決算は201億円の赤字という結果となった。27日に大和ハウス工業とサントリーが自社CMの再開を発表したが、まだまだこれからだ。騒動を機に、あらためて“テレビにCMを出す”ことの是非を見直した企業もあるだろう。フジテレビだけではなく、テレビ界全体の問題でもある。敏腕営業だった若生常務にかかる期待は大きいはずだ。【小谷野俊哉】



