山田洋次監督(94)と、興行収入(興収)166億5000万円と歴史的ヒットを続ける「国宝」の李相日監督(51)が30日、都内で開催中の東京国際映画祭で対談した。
「国宝」は任侠(にんきょう)の家に生まれながら抗争で父を亡くし、上方歌舞伎の名門の当主に引き取られた立花喜久雄を演じた主演の吉沢亮(31)と、渡辺謙(66)演じる歌舞伎俳優・花井半二郎の息子・大垣俊介を演じた横浜流星(29)の2人が、歌舞伎俳優の中村鴈治郎(66)から1年半にわたって歌舞伎の指導を受け、稽古したことが話題を呼んだ。李監督は、山田監督から2人が歌舞伎を身に付けた秘訣(ひけつ)を聞かれ「2人の根気と、教えてくれた人が良かった」と語った上で「最初、何もできないので、すり足から始め…最初の半年、稽古を見学に行って、作品(の撮影)に入れるのかなと頭痛がした」と振り返り、笑った。
山田監督は「(歌舞伎の稽古に)1年半、かけちゃうんだ…でも1年半でできる。本職の女形が悔しくなっちゃうね」と笑った。李監督は「エッセンスを絞るだけ絞った」と答えた。その上で「2人が良かった。相手を見ると、自分が負けているように感じる。相手の方が進んでいると…」と続けた。山田監督は「良い競争になる…2人にとって面白いことになったね」と笑った。
山田監督は「いろいろなことを聞きたいですけど…劇的な構造」と「国宝」の構造について李監督に質問した。「人間の配置は2人の男の話が柱でしょう? その間には、必ず女性が介在して三角関係になるもの。この映画は、違うものが2人の間にある。芸…どうしようもないものが、ドンとある」と「国宝」を評した。その上で「苦しみながら、芸のモチーフにしているのが、そんじょそこらと違う映画にしていること。難しいことを、あなたがちゃんと表現していることに驚いた。最初から考えていたの?」と聞いた。
李監督は「それに関しては、原作の吉田修一さんの発明。歌舞伎を題材にしようと思った時、この構造は頭になかった」と原作小説を書いた作家・吉田修一氏をたたえた。「血筋、芸との対立軸は面白いし、たくさん不条理が詰まっている。どう着地させるか…山田さんがおっしゃるように、真ん中に芸があり、身をささげ、より2人をつなぎ合わせていく美しさが、終盤に訪れて欲しいなと思って」と説明した。



