映画「影武者」や無名塾の主宰などで知られる俳優仲代達矢(なかだい・たつや)さんが死去したことが11日までに分かった。92歳だった。
23年には演出3作目となる舞台「等伯-反骨の画聖」の開幕前日にインタビューで意欲を語っていた。(23年10月19日付掲載「情報最前線」肩書き、年齢などは当時のもの)
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仲代達矢(90)が演出を手がける舞台「等伯-反骨の画聖-」が明日20日、石川県七尾市・能登演劇堂で幕を開ける。70年を超える役者生活だが、演出作は3作目と数少ない。新鮮な気持ちで臨みながら、役者としての刺激も受けている。戦国~江戸時代に活躍した能登出身の画家長谷川等伯を描いた作品。11月には東京・俳優座劇場でも上演される。【小林千穂】
70年以上、舞台と映画、数々の作品で活躍し、主宰する無名塾で後進を育て、自らも研さんを積んできた。ただ、意外にも演出を手がけるのは3作目だ。
「まるで新人みたいで、一生懸命やっています。無名塾はすばらしいスタッフに囲まれていますので、みんなの助けを借りながらです。演出家としては素人みたいなものですから」
稽古では、台本に書き込みをしながら役者の動きをじっと見つめていた。手ぶりも交えて、動きを確認しながら進んでいく。
「演出でやらなければいけないことは、対役者。『俺がやったらこう演じるぞ』というのを押し付けず、それぞれの個性に応じてやっています。指導をするとか大げさなものではなく、困ったことがあったら相談してくれよという相談相手みたいなものです」
個性を生かした演出は、劇作家、演出家だった妻、故宮崎恭子(ペンネーム隆巴=りゅう・ともえ)さんのやり方でもある。
「演出をしながら彼女の存在を思い出しております。女房だったらどうするだろうな、と。女優としてもすばらしかったですが、演出家、役者を導いていくということにかけては天才的でした。私はそれを引き継いでいるという感じです」
演出の難しさとおもしろさを、オーケストラになぞらえ語った。
「皆がすてきな音を出してくれたら、うまく合うように全体のバランスを見て、私は最後にちょっと調整するだけです。音の出し方は皆に任せ、個々に奏でる音色を束ねるマエストロの気分でやっています」
ただ、演出に専念しながら、演じることに対する刺激も受けている。
「『ああ、こういうやり方もあるんだな』と思って見ています。役者を廃業しているわけではなく、役者としての仲代達矢を辞めたわけではないので。今年(12月には)91歳になりますし、そろそろ…なんて言ってますけど、もう少しやりたいなという思いはあります。もしやるのであれば、一生懸命頑張らなきゃいけないぞ、という思いが残っております」
尽きることのない向上心と創造力が、演出を手がけることで一層高まっている。
「演出という仕事は苦しいけれども、ある一面では、人間を見つめる目としてとてもいい仕事なんだなと思っています」



