厚生労働省は6日、大西洋を航行中のクルーズ船で集団感染が発生し、3人が死亡したと報告された「ハンタウイルス」について、「国内で感染拡大するリスクは低いと考えられます」との見解を表明した。
ハンタウイルスはネズミなどの齧歯(げっし)類の一部が持つウイルスで、それらにかまれたり、排泄物に触れたり、排泄物を含んだほこりを吸い込んだりすることによって感染し、腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群という2つの疾患を起こすとされる。ロイター通信などによると、クルーズ船ではオランダ人夫婦とドイツ人男性の3人の死亡が報告された。船内には日本人の乗客も1人いるとされている。
厚労省は「クルーズ船で感染者が確認されたハンタウイルスは、主にネズミ等の排泄物を介して感染します」と説明。「媒介動物の有無等の状況から、国内で感染拡大するリスクは低いと考えられます。現地で適切な健康管理が行われており、引き続き関係機関と連携し対応します」とした上で「国民の皆さまには冷静な対応をお願いします」と呼びかけた。
一方、これに先だって、世界保健機関(WHO)も4日、報告文書を公開。オランダ船籍のクルーズ船内で、これまでに3人の死亡者と1人の重篤な乗客を含む重症急性呼吸器疾患の集団発生の通知を受けたとした。さらに「感染疑い」の3人が船内に残っているとしている。
死亡した3人の症状についても以下のように説明した
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症例1:2026年4月6日、船上で成人男性が発熱、頭痛、軽度の下痢の症状を発症した。4月11日までに呼吸困難に陥り、同日船上で死亡した。微生物学的検査は実施されなかった。乗客の遺体は4月24日に船からセントヘレナ島(英国海外領土)へ移送された。
症例2:症例1の濃厚接触者であった成人女性が、2026年4月24日に胃腸症状を呈してセントヘレナ島に上陸した。その後、4月25日に南アフリカのヨハネスブルクへ向かう飛行機内で容体が悪化し、4月26日に救急外来に到着後死亡した。5月4日、PCR検査によりハンタウイルス感染症と確定診断された。当該便の乗客に対する接触者追跡調査が開始された。
症例1と症例2は、2026年4月1日にクルーズ船に乗船する前に、アルゼンチンを含む南米を旅行していた。
(中略)
症例4:成人女性が肺炎の症状を呈し、2026年5月2日に死亡した。症状の発現は4月28日で、発熱と全身倦怠感があった。
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また、「感染疑い」の3人も高熱または胃腸症状を訴えているという。
WHOはその上で、これまでの感染例も紹介。2025年には南北アメリカの8か国で、229の感染例と59人の死亡が報告され、致死率は25・7%だったと説明した。また「東アジア、特に中国と韓国では、ハンタウイルス腎症候性出血熱(HFRS)は、近年発生率が低下しているものの、依然として毎年数千例の感染例を占めている」とした。
WHOはまた、ヒトからヒトへの感染リスクについても説明。「まれではあるものの、アンデスウイルスによるHPSのヒトからヒトへの感染は、密接かつ長時間の接触を伴う地域社会において限定的に報告されている。医療従事者間の二次感染は、医療施設において過去に報告されているが、依然としてまれである」と、一部ウイルスの報告例について紹介した。
WHOは「現在、この事象による世界人口へのリスクを低いと評価している」としながらも、今後の観察を継続するとともに、ウイルスが存在することが知られている地域での警戒を呼びかけている。

