昨年6月、大手米国企業の株30銘柄を1万円単位で取引できるサービスを始めた。代表取締役CEOの林和人氏(53)が「株を買ったことがない人たちに少額でいいから、世界的に有名な会社の株主になってもらおう」との狙いからスタートさせた。「フェイスブック」「アマゾン」「ナイキ」など、取り扱う会社に関して、マンガで企業物語を紹介。投資未経験者の興味を引いた。

 開始1年で、アプリのダウンロードは30万件を超えた。口座も累計で4万件を超えた。口座開設者の約7割が未経験者、20~30代が約6割と、見込み通りの滑り出しだ。一方、利用者からは「最低投資金額を下げて」「日本株も取り扱って」といった声が高かったこともあり、これに応じる形で新しいサービスを開始している。「株をより身近に感じてほしいから、簡単に買えるようにした」と林氏は強調する。

 株式投資には、まだマイナスのイメージもある。バブル崩壊、リーマン・ショックで暴落したニュースの記憶が大きい。野村総研によると、「お金に余裕がない=41・0%」「素人には難しい=39・9%」「リスクが高い=37・1%」といった理由で、投資をためらう人が多い。東京証券取引所の投資の年代別割合は、20代=6・8%、30代=14・2%、40代=15・7%、50代=18・1%、60代以上=45・2%。若年層を開拓すれば、株式市場を拡大できる。

 林氏は「消費と投資は同じ。ランチを食べたり、生ビールを飲んだと思って、20~30代の未経験者に投資してほしい」と、既存の証券会社との違いを説明する。好きな銘柄を選んで自分の決めた期間で積み立てにしたり、「1万円の投資が3万円まで増えたら焼き肉を食べる」などとテーマを設定することも推奨する。

 日々のニュースに注目すれば、どんな業種に商機があるか想像できる。「ヒアリ騒動で殺虫剤が売れた」など、初心者でも株購入のヒントになるはず。最初は直感で買い材料か、売り材料なのか判断すればいい。過去の事例も含め、経験を積めば勉強できる。

 今後、One Tap BUYでは取扱銘柄を随時、検討して増やしていく予定。5年後には、100万ダウンロード件数を目指す。【赤塚辰浩】

 ◆リーマン・ショック 2008年(平20)9月15日、米国の投資銀行「リーマン・ブラザーズ・ホールディングス」が破綻したことに端を発し、世界金融危機が続発した事象。日経平均株価も大暴落。同年9月12日は終値1万2214円だったが、10月28日に一時6000円台(6994円90銭)まで下落した。

 ◆バブル崩壊 バブル経済のあおりを受け、1991年(平3)3月から始まった景気後退期のこと。株や土地への投機が急減速。土地を担保に行われた融資が焦げ付き、銀行が大量に不良債権を抱え込んだ。日経平均株価は89年12月29日、大納会に終値で最高値3万8915円87銭をピークに暴落。翌年10月1日には一時2万円割れした。