民進党代表選は1日、投開票され、前原誠司元外相(55)が新代表に選ばれた。旧民主党時代以来、12年ぶりの再登板。低迷する党勢の局面打開を目指し「新たな政治の変わり目の日にしたい」と意気込んだが、国会議員の投票では無効票が8票も出た。「離党予備軍」を抱えた、いばらの船出。「ニュー前原」のかじ取りが、党の今後を左右する。代表選で戦った枝野幸男氏(53)は要職で起用する意向で、「全員野球」が最大のキーワードになる。

 「非常に難しい船出だと思った」。枝野氏との一騎打ちを制し、あいさつに立った前原氏に、笑顔はなかった。前原氏は502ポイントで、枝野氏は332ポイント。このうち国会議員の投票では、計142人のうち有効票が134人。8人分は無記名などで、無効票になった。党代表選では、異例の多さ。前原氏は会見でも「白票が多く、大変な党運営になる」と本音を漏らした。

 党運営をめぐる路線対立で、「どちらが勝っても、党は割れる」といわれた。告示前には離党届提出が相次ぎ、無効票も、党への「反旗」だ。そんな中、05年以来12年ぶりの再登板となる前原氏は「皆さんの力で、もう1度、党を政権交代の高みまで持っていくことに力を注ぐ」と強調。第1関門の人事では、枝野氏の執行部での起用方針を明言。関係者によると若手の抜てきも検討されており、「全員野球」を目指す。

 最初の代表時代は、偽メール問題で、約7カ月で辞任に追い込まれた。この日は「これまでいろんな経験を積んだ。経験を生かした党運営をしたい」とアピールしたが、政権に就く前だった当時と、失った今では、党を取り巻く環境は異なる。党大会後には、早速、複数の議員の離党情報が流れ始めた。国民の信頼も挙党一致体制も、おぼつかないのが現実だ。

 次期衆院選に向けた共産党との共闘については「代表は独裁者ではないが、私が選ばれたことを重く受け止めたい」と述べ、見直しを示唆。小池百合子都知事の側近、若狭勝衆院議員が目指す「小池新党」との連携も、政策や理念の共鳴を条件にした。ただ党勢回復がかかる10月22日の衆院トリプル補選は、共産党との調整が急務。「自民党しか選択肢がなく、形の分からない何かへの期待が高まる危うい政治状況を変えなければ」と訴え、自力での再生を目指す方針を掲げた。

 最終演説では、最後の見せ場で「もう1度、政権交代を実現しよう」の雄たけびで、かんでしまい、失笑を誘った。代表としての勝負の場では、勝負弱さは致命傷になる。【中山知子】

 ◆前原誠司(まえはら・せいじ)1962年(昭37)4月30日、京都市生まれ。京大法学部卒。京都府議を経て93年衆院選初当選。党代表や政調会長、旧民主党政権で外相、国交相を歴任。趣味はSLの写真撮影の「撮り鉄」。阪神タイガースの大ファンで、党の草野球チーム「民進カチマス」では主将。衆院京都2区、当選8回。