テレビドラマ化された「孤独のグルメ」などの作画で知られ、今年2月11日に亡くなった漫画家の谷口ジローさん(享年69)の遺稿が、8日から2冊の単行本として発売される。小学館が7日、都内で発表した。

 刊行されるのは「いざなうもの」(原作・内田百計『冥途』)、「光年の森」の2冊。どちらも約2年間の闘病中に描かれた作品で完成には至らなかったが、遺族などの同意を得て掲載することになった。

 「いざなうもの」は、全30ページ。谷口さんの従来の作風とは違い、薄墨や鉛筆、修正液で描く独特の技法が用いられている。15年夏から今年の1月上旬まで、断続的に執筆が続けられたが、最後の10ページは完成しておらず、下書きの形での掲載となった。同作の編集を担当した今本統人さんは「完結した形で発表できず残念だが、完成している部分は美しく、絵として衝撃を与えるものになっている。ぜひ最後まで読んでほしい」と話した。

 「光年の森」は、森と対話して成長する少年の物語だ。当初は全5章になる計画だったが、第1章の原稿を描き上げ、第2章のネームができたころに谷口さんの症状が重くなった。生前は「風景が持つ感情がある。僕は風景を単なる背景としてではなく、登場人物の1人のように、感情を語らせたい」と話していたという。横長オールカラーで描かれた同作は、人間の視界を最大限に使った作品になっている。

 谷口さんは、欧州を中心に海外でも高く評価されていた。「光年の森」は、すでにフランスで発売されており、ドイツやイタリアなどの出版社からも、それぞれの言語での出版オファーが来ているという。「いざなうもの」は現在は日本語版のみだが、近いうちに各国版を発売する予定だという。

 12月9日から22日までは、東京都渋谷区の日仏会館ギャラリーで「谷口ジロー氏原画展」が開催される。