東大紛争さなかの大学祭(駒場祭)のポスター「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」や小説「桃尻娘」などで知られる作家の橋本治(はしもと・おさむ)さんが29日午後3時9分、肺炎のため、都内の病院で死去した。70歳だった。東京都出身。喪主は母美代子(みよこ)さん。

東大在学中の1968年(昭43)、駒場祭のポスターで注目され、卒業後はイラストレーターに。さくらと一郎の「昭和枯れすすき」(74年)のレコードジャケットや人気テレビドラマ「時間ですよ」の第4シリーズ「時間ですよ・昭和元年」(74年)のタイトルバックなどを手掛けた。

77年、女子高生の風俗を超口語体で軽やかに描いた小説「桃尻娘」で作家デビュー。同作は映画化、テレビドラマ化された。古典の現代語訳にも取り組み、「春って曙(あけぼの)よ!」「夏は夜よね。月の頃はモチロン!」と、「枕草子」を若い女性の話し言葉に訳した「桃尻語訳 枕草子」(87年)はベストセラーになった。「窯変源氏物語」(全14巻)、「双調平家物語」(全15巻)など次々と現代語訳を手掛け、「双調平家物語」は08年の毎日出版文化賞を受賞した。

評論でも「宗教なんかこわくない!」(96年)で新潮学芸賞、「『三島由紀夫』とはなにものだったのか」(02年)で小林秀雄賞を受賞している。昨年11月、小説「草薙の剣」で野間文芸賞を受賞したが、受賞会見を欠席。文書で上顎洞(じょうがくどう)がんで入院し、闘病中であることを明かしていた。