宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」の着地に成功したと発表した。「はやぶさ2」は21日に高度2万メートルから降下開始し、表面の半径3メートルという極めて狭い目標にピンポイントでのタッチダウン。表面の岩石や砂の採取を試み、正常に浮上したことが確認された。

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先代はやぶさ以来、世界2例目の小惑星へのタッチダウンの快挙は、完璧にコントロールされた高速ストレートだった。プログラミングの最終調整で約5時間遅れたが、降下速度を秒速40センチから秒速90センチへスピードアップ。予定を約40分上回るスピード、しかも直径6メートル以内の目標のど真ん中に初球ストライクだ。日本の卓越した技術力、制御能力の高さを見せつけた。

昨年10月に最初の着陸を予定していたが、表面が想定を上回る高さ60センチ以上の岩や険しい地形であることが判明し、延期された。探し当てた平らな着陸地点は当所の直径100メートルから同6メートルと超シビアになった。野球のマウンドは直径18フィート(約5・49メートル)。「甲子園球場のグラウンドからマウンドへの着地になった。だが、我々は甲子園のマウンドに立った」。管制室で陣頭指揮を執った津田雄一プロジェクトマネジャーは歓喜のガッツポーズ。甲子園球場を例えに熱弁をふるった津田氏は「阪神ファンではないのですが」と小声で苦笑した。

世界最高水準の緻密で高度な制御テクノロジーは完璧だった。「はやぶさ2」から送信されたデータ画像を解析した吉川真ミッションマネジャーは「マウンドなら着陸地点は、おそらくピッチャーズプレートですね」と画像を指さした。

最期は「はやぶさ2」が自力で決めた。高さ45メートル以下は地上から制御不能となる。カメラ画像や高さを自動検知して降下、着陸と同時にプロジェクタイル(弾丸)を表面に打ち込み、舞い上がった石や砂などの採取に成功したとみられる。プロジェクトメンバーは、2代目に親しみをこめて「はやツー君」と呼ぶ。「3億4000万キロのかなた、独りぼっちで複雑で正確なミッションを完璧にこなしてくれた。試料は玉手箱だけど、1回目で何らかのものは採取できたのでは」(久保田孝・研究総主幹)。

「はやツー君」は7月末までに2度の着陸採取を行う予定。2回目以降は、地表に金属を撃ち込んで人工クレーターを作り、地下の内部からの試料採取も試みる。すべてのミッションを終えた「はやツー君」が地球へ帰還するのは東京五輪後の20年末の予定だ。【大上悟】

◆小惑星「りゅうぐう」「りゅうぐう」は地球と火星との間に位置する直径約900メートルの小惑星だ。地球からは3億4000万キロ離れており、「はやぶさ2」に指令を伝えるまで片道約20分かかる。今回の降下速度では高度500メートルを切ると地上からの指令が間に合わなくなる可能性があり、「高度45メートルを切ると電波が届かない」(久保田孝・研究総主幹)。「りゅうぐう」には太陽系が誕生した約46億年前の名残をとどめた物質が残っていると推察されている。採取された試料によって太陽系の誕生にまつわる謎の解明が期待されている。