学校法人瓜生山学園京都造形芸術大学(京都市左京区)が来春に「京都芸術大学」と校名変更すると発表したことに反対している京都市立芸術大学(西京区)が2日、同学園に対して「京都芸術大学」の名称の使用を差止める訴訟を大阪地方裁判所に起こした。これに対して造形芸術大もこの日夕、HPでコメントを発表。「突如、訴訟提起のリリースをされたことに大変驚いております」「今回の名称変更について法的にも一切問題はないと考えておりますので、裁判に対しては粛々と対応して参ります。裁判所にも本学の考えをご理解いただけるものと考えております」と法廷闘争になった場合は受けて立つ構えをみせている。

市立芸術大の赤松玉女理事長はHPでコメントを発表。「当該名称は本学の名称や一般的に通用している略称と同一あるいは酷似しているため、受験生や本学の在学生・卒業生をはじめ、市民の皆様や芸術を愛する幅広い人々に大きな混乱を招くと危惧し、再三中止再考をお願いしてまいりました」と経緯を説明。造形芸術大が8月27日に変更を公表して以来「予想以上の混乱が生じている状況」とした。さらに造形芸術大が8月30日にHPに発表した尾池和夫学長のコメントに触れ「従来からのご主張を維持されておられることを確認し、やむなく訴状を提出することにいたしました」「本学及び京都造形芸術大学の在学生や卒業生、両大学を目指して受験される皆様、関係するすべての方々の混乱を最小のものにするために、明確な司法判断を求めたいと思います」と説明している。ただ「協議の門戸は引き続き開いたままにしています」と話し合い解決の姿勢も維持している。

両者の対立は、造形芸術大が京都市に変更を報告した7月9日から続いてきた。書面などで複数回のやり取りがあったが平行線のまま。この間、造形芸術大は7月17日に「京都芸術大学」を商標登録出願し、7月30日に情報公開された。市立芸術大も7月11日付で普段から呼ばれている略称「京都芸大」「京芸」など4点、7月18日付で「京都芸術大学」を商標登録出願し、いずれも8月20日までに情報公開。現在は双方とも審査待ちとなっている。

造形芸術大が変更を公表した翌日の8月28日には、市立芸術大の赤松学長もHPで「解決の方向性を見出し難いと判断した場合は,法的措置も含めた適切な対応をとってまいります」とコメント。京都市の門川大作市長も同市HPに異例のコメントを発表。「驚愕しています」との言葉を使い、強く再考を求めていた。

なお、文科省大学設置室によると、校名変更は文科省が「認可」するものではなく、「大学設置基準」にのっとった校名であれば届け出ることができ、原則受理される。造形芸術大の届け出を8月27日に受理した大学設置室は、当事者同士の協議を見守る姿勢だ。

 

■京都市立芸術大=京都造形芸術大学の名称変更についての理事長コメント

公立大学法人京都市立芸術大学では、本日(9月2日)、学校法人瓜生山学園に対し、同学園が設置する大学の名称として『京都芸術大学』の名称の使用を差止める訴訟の訴状を大阪地方裁判所に提出いたしました。

京都造形芸術大学が2020年4月1日から大学の名称を「京都芸術大学」に名称変更されることにつきましては、当該名称は本学の名称や一般的に通用している略称と同一あるいは酷似しているため、受験生や本学の在学生・卒業生をはじめ,市民の皆様や芸術を愛する幅広い人々に大きな混乱を招くと危惧し、再三、中止再考をお願いしてまいりました。

こうしたなか、京都造形芸術大学が8月27日に名称変更を正式に発表され、本学及び京都造形芸術大学の在学生・卒業生をはじめとする多くの方々のなかで、予想以上の混乱が生じている状況です。

さらに、8月30日付けで京都造形芸術大学のホームページに発表されました『開学30周年「グランドデザイン2030」についての学長コメント』において、「京都芸術大学の名称に変更する」という従来からのご主張を維持されておられることを確認し、やむなく訴状を提出することにいたしました。

本学及び京都造形芸術大学の在学生や卒業生、両大学を目指して受験される皆様、関係するすべての方々の混乱を最小のものにするために、明確な司法判断を求めたいと思います。

なお、京都造形芸術大学との協議の門戸は引き続き開いたままにしています。どうかご理解いただきますようよろしくお願いいたします。

公立大学法人京都市立芸術大学 理事長 赤松玉女

(原文まま)

 

■瓜生山学園京都造形芸術大=京都市立芸術大学の訴状の提出に対する本学のコメントについて

本日(9月2日)14時頃、公立大学法人京都市立芸術大学が、本学に対して「京都芸術大学」の名称の使用を差し止める訴訟を提起した旨のリリースを出しております。

8月30日(金)17時55分に、京都市立芸術大学から、「京都芸術大学」への名称変更の中止再考の要請があったのに対し、本学は、同日中に、京都市立芸術大学に対して、忌憚のないお話をさせていただきたいので、面談の日程等を調整させていただきたい旨ご連絡しておりました。それにもかかわらず、京都市立芸術大学が、本学の申し入れに対して何ら返答することもないまま、その直後に突如、訴訟提起のリリースをされたことに大変驚いております。

また、京都市立芸術大学は、リリースの中で、「京都造形芸術大学との協議の門戸は引き続き開いたままにしています」と述べておられますが、上記のとおり、京都市立芸術大学は、本学が話し合いを申し入れていたところ、一方的に訴訟を提起した旨を発表したものですので、本学としては京都市立芸術大学の真意を測りかねております。

まだ訴状を受領しておらず、京都市立芸術大学の請求や主張の内容は分かりませんが、本学としては、今回の名称変更について法的にも一切問題はないと考えておりますので、裁判に対しては粛々と対応して参ります。裁判所にも本学の考えをご理解いただけるものと考えております。

学校法人瓜生山学園 理事長 徳山豊

(原文まま)

 

◆京都市立芸術大学 1880年(明13)開設の日本初の公立絵画専門学校を母体とし、日本最長の歴史を持つ芸術大学。美術学部と音楽学部で計5学科。日本画の上村松園、前衛芸術の草間彌生ら文化勲章受章者や人間国宝を多数輩出している。

◆京都造形芸術大学 1991年(平3)に瓜生山学園京都造形芸術大学が開設された。2000年には京都芸術短期大学(1997年(平9)開設)と統合され、総合芸術大学に。芸術学部は計13学科22コース。卒業生に金沢21世紀美術館キュレーターの高橋洋介氏、漫画家の赤池うらら氏らがいる。