鉄の町、岩手の釜石。高台にある薬師公園からは製鉄所や港が一望できる。

桜が満開を迎えた園内、熱心にファインダーを見つめる男性がいた。フリーカメラマンの藤枝宏さん。釜石で生まれ、釜石で育ち、今も釜石を愛する。「学生の頃から写真を通して街の移り変わりを見つめてきた。今年は天気の影響でいつもより長い期間桜を見ることができましたね」と笑顔を見せた。

藤枝さんにこの街の桜について聞いてみた。「桜を見ていると3・11から1カ月ほどが経った頃の記憶を思い出してしまうことがある。あの時…釜石の街は変わってしまった。けれども勇気をもらったり、少しでも前を向いて歩いていこうという気持ちにもさせてもらっている」。

あれから10度目の春、釜石の力強い歩みを、人々を桜が優しく見つめている。