英国の製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学は、共同開発中の新型コロナウイルスのワクチン「AZD1222」の臨床試験(治験)を一時的に中断した。欧米の報道によると、この治験は世界中で行われ、英国、米国、ブラジルなどで最終段階フェーズ3が始まっているが、英国の参加者1人に原因不明の疾患が出た。症状など不明だが、米医療メディアSTATは深刻な副作用が出た疑いがあると伝え、米紙ニューヨーク・タイムズは脊髄炎が確認されたと報じた。回復する見込みという。同社は何らかの疾患が出た時の通常対応で、独立した検証を行うとした。

同社日本法人によると、日本でも、先月末から治験が始まった。国内の複数の施設で、18歳以上の約250人を対象にフェーズ1、2の治験を行う計画だが、同様に一時中断となった。

ワクチンは、世界各国で百数十種が異例のスピードで開発競争を展開。今回のワクチンは最も実用化に近いとみられるものの1つだ。日本政府も、開発に成功した場合、1人2回接種で6000万人分、計1億2000万回分を購入することで同社と合意している。有効性や安全性を確認する治験は通常3段階で行われ、長い時間がかかる。最前線では安全性を最優先に開発を急いでいるが、この中断がワクチン開発に影響があるのか、注目される。