5月6日に横浜市戸塚区のアパートからアミメニシキヘビが脱走して10日が過ぎた。地元警察や消防団など約100人態勢での懸命の捜索にも、その痕跡すら発見できていない。毒はないとはいえ性格は攻撃的で、生息地の東南アジアでは人を襲ったという報告もある。近隣住民の不安とストレスは募るばかりだ。

これまでも国内で飼われていた危険な動物が脱走して、近隣住民を恐怖のどん底に落とした騒動が何度かあった。

中でも最も有名なのが、1979年夏に千葉県君津市でトラが逃げ出した騒動だろう。お寺の境内で飼育されていたトラのうち2頭が、同年8月2日夜に脱走した。飼育係がオリのカギをかけ忘れたのが原因だった。トラ3頭が逃げだし、1頭はすぐにオリに戻ったが、生後1年の若い雄と雌の2頭が姿を消した。

同3日未明に通報を受けた県警は対策本部を設置。消防団や猟友会などを動員して大捜索が行われた。

雌のトラは脱走2日後の4日に寺の近くの山中で発見されて射殺されたが、残る雄のトラはいっこうに見つからず、捜索は難航した。ところが同28日に寺から4キロ離れた民家で飼い犬が襲われて死んでいるのが発見されたことで急展開。同日午後に県警と猟友会のメンバーらが近隣の山中を捜索して、トラを発見して射殺。1カ月近くに及んだ恐怖の日々にようやく終止符が打たれた。

捕獲まで連日、このニュースが大々的に報じられたことで、全国の動物愛護団体から「射殺するな」「かわいそうだ」と抗議が殺到した。

1991年12月には北海道のレジャー施設からヒグマ1頭が脱走した。同14日午前9時ごろ、クマを別の部屋へ移動させる作業中に逃げ出した。作業員が移動用のオリの扉を閉め忘れたのが原因だった。

施設から通報を受けた旭川東署は、すぐに同署員やハンターらで捜索を開始。ほどなく山中に数キロ入ったところで、クマを発見して射殺した。当時、施設は冬季休業中で、観光客などがいなかったことで民間人に被害はなかった。

1992年9月には、福島県いわき市でライオンが脱走して地元住民を震え上がらせた。同19日午前6時ごろ、いわき市総合運動公園で公演中だったサーカスの鉄製のオリからライオン1頭が逃げ出し、公園内を歩いているところを近隣住民が発見。いわき中央署に届けた。

ライオンは7歳の雄で裏山に逃げ込んだ。現場は市の中心地から外れた場所だったが、近隣には民家や学校もあった。裏山を中心に警察官と地元猟友会の会員らで捜索。同日午前11時ごろに発見して射殺した。

いずれの騒動も近隣住民に被害はなかったが、原因は飼育する人たちのずさんな管理とうっかりミス。何も知らず、ただオリから抜け出しただけで、射殺された動物たちこそ最大の被害者だった。