第166回芥川賞・直木賞の選考会が19日、都内で開かれ、芥川賞に砂川文次さん(31)の「ブラックボックス」(群像8月号)、直木賞に今村翔吾さん(37)の「塞王の楯」(集英社)と米沢穂信さん(43)の「黒牢城」(KADOKAWA)が選ばれた。

芥川賞の砂川さんは3度目のノミネートだが、本名非公表でメディアに顔を出すことのない覆面作家として知られ、受賞会見が初の素顔公開となった。「今まで賞を受賞してこういうところに引きずりだされることがなかったので…。やだなあと思っています」と、困り切った表情で話した。

元自衛官でヘリコプターの操縦をしていた。過去の候補作は戦闘シーンが話題になったが、受賞作は一転、自転車便のメッセンジャーを描く。「格差社会の底辺を生きる人物を古風なリアリズムで描き、現代のプロレタリア文学という声もあった」(選考委員の奥泉光氏)という。区役所勤務の今は夜8時に就寝し、午前2時に起きて執筆している。「妻には良かったねと言われましたが、上の子はポケモンをやっていて見向きもしてくれなかった」と明かした。【中嶋文明】