ウクライナに侵攻するロシアに対し、欧米諸国から厳しい経済制裁が科せられる中、シャネルやルイ・ヴィトンなどの高級ファッションブランドから購入を禁じられたロシアの富裕層や一部インフルエンサーの間でバッグを切り裂く抗議運動が広がっていると米ニューヨーク・ポスト紙などが報じた。

ロシア人モデルのビクトリア・ボニア(42)は、自身のインスタグラムに「シャネルのように顧客に対して無礼な行動をとるブランドを見たことがない」とキャプションを添え、「シャネルが顧客を大切にしないのに、なぜ私たちがシャネルを尊重しなければならないの?」と語り、手にした黒のショルダーバッグをハサミでズタズタに切断する動画を投稿。最後は「バイバイ」と切断したバッグを放り投げている。

同紙によるとシャネルを含む欧米の多くの企業は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けてロシア国内での営業を停止しているが、富裕層らはロシア国外での購入まで禁止されることになるとは予想していなかったという。そのため国内で購入できなくなった人々は、ドバイなど国外で商品を購入してロシアに持ち込もうと画策していた。

しかし、そんな動きを察知したシャネルは、ロシア国内に商品を持ち込むことを禁止し始めたという。ある有名インテリアデザイナーの女性は、ドバイのシャネルで購入を拒否されたとインスタグラムに投稿。新たなポリシーによってロシア国内では使用しないと誓約書に署名しない限り販売することはできないと言われたと不満をぶつけ、バッグを切断する抗議を行った。

また、テレビ司会者で女優のマリア・エルモシュキナも「これはただのバッグ。祖国への愛に見合う価値はない。ロシア嫌悪に反対する。ロシア嫌悪を支持するブランドに反対する」と語り、シャネルのバッグを庭切りはさみで切り裂いている。

彼女たちの投稿には、抗議を支持するコメントが寄せられている一方、戦争で大勢の人が亡くなる中で高級ブランドのバッグを購入できないことに不満をぶつける女性たちをあざ笑う批判的なコメントも多く見受けられると、ニューヨーク・ポスト紙は伝えている。同紙の取材に対し、シャネルからの返答はないという。(ロサンゼルス=千歳香奈子)