渡辺明棋王(名人=38)への挑戦権を争う、将棋の第48期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント(挑決T)準決勝、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)対佐藤天彦九段(34)戦が3日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた。対局は121手で先手の佐藤が勝ち、決勝に進出した。藤井は敗者復活戦に回った。もう一方の準決勝、羽生善治九段(52)対伊藤匠五段(20)戦は5日、同所で行われる。

矢倉の濃厚な中盤から藤井が抜け出したかにみえた。5~8筋の小競り合いでリードを奪ったと思われたが、「先手8三桂(83手目)と先手8四桂(85手目)が見えていなかった。その前後にこちらから何か手があったかと思います」。佐藤の反撃と粘りに攻めあぐねた。最後は天井を仰ぎ、投了を告げる。過去3戦3勝の相手に初白星を献上した。

対局前、前局(10月28日)のA級順位戦4回戦で長時間にわたるマスク不使用のため、反則負けと裁定された佐藤天は周囲を驚かせた。「貴族」の愛称そのままに、ファンから贈られたとみられる赤いバラの花束を手に入室してきた。「盤外戦」に動揺はしなかったが、名人3期保持の実力者の方が一枚上だった。

棋王戦には、ほかのタイトル戦にはない独特の「2敗失格」システムがある。挑決Tベスト4以上の敗者復活戦だ。まず、準決に敗れた2人で同1回戦を行う。

藤井が羽生対伊藤戦の敗者に勝てば、挑決T準優勝者との敗者組決勝を行う。それに勝てば、挑決T優勝者との挑戦者決定戦となる。

挑決T優勝者は1勝すればスンナリ挑戦権を得られるが、敗者復活組は優勝者に2連勝するのが条件。藤井はもう1敗もできない。「目の前の1局に集中して頑張りたいと思います」。ルールを生かして、チャンスがまだある年度内6冠への切符をつかむ。【赤塚辰浩】