将棋の最年少5冠、藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)が羽生善治九段(52)の挑戦を受ける、第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第6局(主催 毎日新聞社・スポーツニッポン新聞社・日本将棋連盟)が11、12の両日、佐賀県上峰町「大幸園」で行われ、88手で後手の藤井が勝ち、4勝2敗でタイトルを初防衛した。通算タイトルは最速、最年少で歴代8位タイの12期目を獲得した。羽生は前人未到のタイトル100期獲得はならなかった。

世代を超えたスターが初めてタイトルを争う歴史的な一戦。第6局は先手の羽生が角換わりの戦型に誘導。第4局で勝利した角換わり腰掛け銀ではなく、駒が前に前に進む早繰り銀を選択した。1日目午前は両者とも研究の範囲なのか、ハイペースで進んだ。藤井の40手目で前例を離れると、未知の領域に入り、昼食休憩を挟み1時間以上の長考合戦になった。

形勢は藤井のやや有利で迎えた2日目は、お互いの角の働きがポイントとなった。藤井の筋違いの「7四角」が効くのか、羽生の手持ちの角が刺さるのか。藤井は76手目に「5六角」と進軍させる。「形が見えてきた」。勝利への手応えを感じた。“羽生マジック”を封印し、鮮やかに寄せきった。

今シリーズは先手番が勝ち続ける一進一退の攻防戦が繰り広げられていたが、第6局では藤井がシリーズ初の後手番ブレーク。これでタイトル戦に12度出場し、いずれのシリーズも制し、5冠を堅持した。

レジェンドとの対局を振り返り「中盤以降に気づいていない手を指されることが多かった」と振り返り、「得るものが多いシリーズだった。今後に生かしていきたい」と話した。

2月に始まった渡辺明棋王(名人)に挑む棋王戦5番勝負では、2勝1敗で最年少6冠に王手をかけている。19日には第4局が行われる。名人戦の挑戦権も獲得し、4月から名人戦7番勝負に挑む。史上最年少の20歳での名人獲得がかかるシリーズとなる。