囲碁の藤澤一就八段(60)一門が、能登半島地震の被災地である石川県七尾市で「チャリティー指導碁会」を開催した。今回の会は15日に開催され、師匠のほか、弟子の関航太郎九段(23)、広瀬優一七段(23)、木部夏生三段(28)、竹下凌矢二段(20)、河原裕二段(19)、竹下奈那初段(17)と、藤澤の弟弟子で名人2期、本因坊3期などタイトル獲得計13期の高尾紳路九段(48)が参加。14日に七尾入りした。

まずは、同市内にある能登演劇堂で復興祈念公演「まつとおね」を観劇。和倉温泉の宿泊先ではこの劇の制作プロデューサーで七尾市出身の近藤由紀子氏をはじめ、囲碁初心者を10人ほど集めて入門編の指導碁も急きょ行われた。翌日は、地元石川県能美市出身で、能美市観光大使も務める日本棋院中部総本部の寺田柊汰三段(28)も加わり、同市文化ホールで指導碁計3回と、地元の強豪アマと女流棋士2人が組んでのペア碁、トークショー、お楽しみ抽選会などを行った。

今回のツアー、昨年1月に発足した一門の後援会である「伝統文化棋道振興財団」の評議員を、「まつとおね」の作者で脚本家の小松江里子氏が務めていること、昨年8月に東京・市ケ谷「日本棋院東京本院」で能登半島地震のチャリティーイベントを開催したことなどの「御縁」ならぬ「碁縁」から開催に至った。

会では、地元の茶谷義隆市長、石川県囲碁協会に寄付金の目録を手渡した。また、碁石を入れる碁笥(ごけ)を製造、販売し、地震で大きな被害を受けた「谷口」の谷口正晴社長には、世界棋戦「SENKO CUP」と重なって参加できなかった上野愛咲美女流立葵杯(23)と上野梨紗女流棋聖(18)の姉妹の色紙が贈られた。

藤澤自身、14年前の東日本大震災の時も個人でチャリティーを行っていた。「今回は16人に増えた弟子の協力を得て、実現した。準備が大変でしたが、来てよかった。また、このような活動もしていきたい。一門の後援会ができて、囲碁の技術の向上だけではなく、外部との交流や普及活動、囲碁を通じての社会貢献もしていきます」と話した。

ペア碁に出たり抽選会の司会を務めた木部は、「コロナや地震で対面のイベントがひと息になってしまった。今回は皆さんが終始、明るい雰囲気で楽しんでもいた。少しでもお役に立てたのなら、来た甲斐があったと思います」と話した。関は「大盤解説会よりも多いんじゃないかと思うくらいの入りだった。囲碁の熱の高さを感じました」と驚いていた。

昨年1月1日の地震から約1年2カ月が経過した。七尾市内にはまだ倒壊家屋があったり、工事中の場所もある。復興途上の街で、発展途上の若手棋士たちにとっては、いい経験になったに違いない。