将棋の名人獲得経験者で「ひふみん」の愛称で知られる加藤一二三(かとう・ひふみ)九段が22日午前3時15分、肺炎のため死去した。86歳だった。

1954年(昭29)8月に14歳7カ月と当時の史上最年少でプロになった。30歳で洗礼を受けて熱心なキリスト教徒となると、名人1期などタイトルを計8期獲得し、17年6月に現役を引退した。その後はタレント活動なども行い、マシンガントークで人気者となった。

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現役のころの勝負メシは「うな重」、休憩時に賛美歌を歌ってから盤に向かう。対局中のネクタイは畳につくほどに長く、大きなせき払いをして、ズボンをたくし上げる。引退後、やりとりして詰め将棋原稿の文字は、「あの文字がよく解読できますねぇ」と、周囲から言われるほど。これらの奇行だけなら、「奇人」「変人」と勝手に思われて終わっていただろう。

藤井聡太という、後継者の出現と相前後して加藤先生は引退した。縁あって、日刊スポーツの社会面でコラム「ひふみんアイ」をお願いした。「こんな手、お目にかかったことがありません。超絶の好手です」「どうしてあんな手を指したんでしょうねぇ。敗着を超えて、大失着です」。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いはファンに喜ばれた。

もっとも、記者はコラム取材で締め切りに追われた。「先生、持ち時間10分で」と電話で伝えても、超絶マシンガントークはとどまることを知らずにさえ渡る。気が付けば5分、10分のオーバーは当たり前。毎回ひやひやの連続だった。

頭の回転が速く、次から次へと文字が脳内に浮かぶのだろうが、それがあまりに速すぎて言語能力が続かない。「えーっと」「あれですねぇ」といったつなぎの言葉を交えつつ、とにかくしゃべる。以前に何度も聞いた過去の話を突如としてしゃべり出す。「あのおしゃべりに聞きバテもせず、よく文章になりますねぇ」と多くの関係者から何度も言われた。いやいや、「将棋LOVE」が伝わり、文字にするのが楽しかった

奇行もさることながら、記者が楽しみにしていたあのマイペースのおしゃべりを、昨年11月の竜王戦第4局から聞けなくなったのが今はさみしい。【将棋担当 赤塚辰浩】

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