将棋の元名人で、22日に肺炎のため86歳で亡くなった加藤一二三(かとう・ひふみ)九段の告別式が28日、東京・聖イグナチオ教会で執り行われた。敬虔(けいけん)なキリスト教の信者だった加藤さんを追悼するため、棋士だけでなく、約350人もの関係者が参列。最後のお別れをした。

   ◇   ◇   ◇   

祭壇の遺影は、満面の笑みを浮かべていた。加藤さんが2017年(平29)1月20日、第88期棋聖戦2次予選で飯島栄治七段(当時)に勝った時に撮影された。丸田祐三九段の76歳11カ月を超え、77歳0カ月で史上最年長勝利の新記録を達成した時だった。

祭壇の左には、ギネス世界記録の認定証も飾られていた。24年11月、JAグループの月刊誌「家の光」で65年間にわたって詰め将棋を出題し続けたことが、「同一雑誌におけるボードゲームパズル作者としての最長キャリア」として認定された時のものだ。

告別式には、82年に加藤さんから当時の史上最年少記録となる21歳2カ月で名人を奪取した谷川浩司17世名人、佐藤康光九段、渡辺明九段のほか、16年12月のデビュー戦で加藤さんと対戦した藤井聡太6冠の師匠の杉本正隆八段、前日にA級順位戦の対局を終えたばかりの糸谷哲郎八段と中村太地八段ら、多くの棋士が参列した。

この教会は加藤さんの盤外活動の場でもあった。夫妻で40年ほど前から結婚相談を開設し、相談されたカップル数は300組にも及ぶという。

盤から離れたところでは、晩年は「ひふみん」の愛称で親しまれていた。盤に向かった時に見せた迫力とは裏腹に、テレビのバラエティー番組などで見せた軽妙でユーモアあふれるおしゃべりやしぐさ。そのギャップがお茶の間に受け、すっかり「国民的おじいちゃん」となっていた。記録は将棋関係だけかもしれないが、記憶は世の中で多くの人の中に永遠に残るだろう。

キリスト教の教えに基づいて、その場その場で最善を尽くしてきた加藤さん。聖歌とともに天へと召され、人生の終局を迎えた。【赤塚辰浩】