<函館スプリントS>

キミワクイーンの横山武騎手は、好スタートから下げて追い込みに懸けた。この判断が素晴らしい。もともと先行して結果を残してきた馬。戦法を変えるのは勇気がいる。ましてや開幕週の良馬場だ。それでも思い切った策に出たのは、外枠(8枠15番)というのもあっただろう。

無理に好位へ取り付けば3、4コーナーでかなり外へ振られる。このロスを考えれば控えて脚をためた方がいい。スムーズに引いて後方4、5番でリズム良く走らせた。もうひとつは流れを読む力。大外のカルネアサーダが積極的に出ていけば、内の逃げ、先行馬はかぶされるのを嫌って加速する。前は速い。その読み通り前半3ハロンは33秒0で流れた。

道中はブトンドールに連れて行ってもらう形。残り400メートルを過ぎても後ろで我慢。直線入口でディヴィナシオンが外からまくってくると、それに合わせるように外へ出した。このタイミングも絶妙だ。一気にブトンドールを抜き去ると、ゴール前で先頭のジュビリーヘッドを4分の3馬身かわした。

短距離でもハナを切れる前半のスピードを、後半の瞬発力に生かした好例。馬に重賞初制覇をプレゼントするとともに、新たな一面を引き出して脚質の幅も広げた。秋の大舞台へ向けてひとつ階段を上がったといっていい。

キミワクイーンで函館スプリントSを制した横山武騎手はガッツポーズ(撮影・村野早祐)
キミワクイーンで函館スプリントSを制した横山武騎手はガッツポーズ(撮影・村野早祐)