秋華賞(G1、芝2000メートル、15日=京都)はリバティアイランドの相手探し、との見方が有力だが、本当に女王を脅かす馬はいないのか。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」はオークス5着シンリョクカ(竹内)に注目する。現時点では府中牝馬Sとの両にらみだが、春からの成長は大きく、出走してくれば怖い存在。「1強」ムードの勢力図を変えることができるか。逆転の可能性を探った。

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シンリョクカが「実りの秋」を迎えた。1年前の10月にデビュー。新馬勝ちを決めると放牧を挟んで阪神JF、桜花賞、オークスとG1を連戦。成長を促しながらトップレベルとの対戦の中で経験を積み、実が熟すのを待っていた。これまでリバティアイランドとは3戦3敗。完成度の差が大きく、体質強化に時間はかかったが、ひと夏越してようやく勝負できる「域」に達した。

オークス5着は改めて能力の高さを感じさせる一戦だった。8枠17番という不利な条件で、なおかつハーパーとのポジション争いで内に入れず。終始、外々を回る厳しい展開。それでも4角から大外を仕掛けてリバティアイランドを負かしにいった。さすがに坂上で苦しくなったが、最後は盛り返して2着とは0秒3差。内枠で脚をためられたら結果は違っていただろう。完成途上でこの内容は評価していい。

今回も放牧→ぶっつけのローテだが、春とは中身が違う。1週前の4日はウッドコースで5ハロン64秒9ー11秒9。手綱を取った竹内師も「ここまでしっかりやれたのは初めて。背も伸びて成長している」と完成の域に近づきつつあることを評価した。レース数は少ないが経験値は豊富。どのポジションでも折り合えて、しまいは確実に脚を使う。立ち回りのうまさを生かして、2冠女王に鋭く迫るシーンもありそうだ。


【ここが鍵】京都内回りを器用に立ち回れるか

リバティアイランドは、オークスで2着ハーパーに6馬身差をつけた。勝ち時計の2分23秒1は流れの違いがあるにせよダービーのタスティエーラ(同2分25秒2)をはるかにしのぐ。決定的とも思える着差は「能力」+「完成度の差」でもある。でなければ、あれほどのパフォーマンスは見せられない。

だとすれば、秋に成長のピークを迎えた馬との差は確実に詰まる。さらに今回は京都内回り2000メートルに替わり紛れも生じやすい。阪神外回りや東京のように直線が長いコースなら取りこぼす危険も少ないが、この舞台では器用に立ち回れるかが鍵になる。


■マスクトディーヴァ 瞬発力リバティアイランドと遜色ない

ローズSを制したマスクトディーヴァも4戦のキャリアで伸びしろは大きい。前走は全体ラップで2番目に速い11秒0(残り400→200メートル)のところで仕掛けて押し切った。瞬発力ならリバティアイランドとも遜色ない。内回りをこなせば首位争いに絡める。

坂路で調整するマスクトディーヴァ(撮影・白石智彦)
坂路で調整するマスクトディーヴァ(撮影・白石智彦)

■ドゥーラ 極端な高速決着にならなければ

オークス3着のドゥーラは、クイーンSで新しい一面を見せた。序盤は後方に位置したが、3角から仕掛けて4角は2番手。まくる競馬で押し切れたのは収穫だ。これなら京都内回りにも対応できる。もともと能力は高く、極端な高速決着にならなければ面白い。

厩舎周りで運動するドゥーラ(撮影・白石智彦)
厩舎周りで運動するドゥーラ(撮影・白石智彦)

■モリアーナ G1で通用する末脚

紫苑Sを制したモリアーナは、2000メートルに距離を延ばして末脚が生きた。それにしても開幕週の馬場で4角14番手から馬群を突き抜けた脚はすごい。春は不完全燃焼の競馬が多かったが、改めてG1で通用する能力を証明した。展開ひとつで勝負になる。

モリアーナ(2023年4月撮影)
モリアーナ(2023年4月撮影)