ジャパンCは王者イクイノックス、3冠牝馬リバティアイランドの初対決が話題になっているが、水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、天皇賞・秋7着ドウデュース(牡4、友道)に注目。前走は急きょの乗り替わりに加え、レースでもスムーズさを欠いたのが敗因だ。ダービーを制した東京2400メートルで巻き返しはあるのか、検証した。

天皇賞・秋に出走したドゥデュースと戸崎騎手
天皇賞・秋に出走したドゥデュースと戸崎騎手

天皇賞・秋のドウデュースは、いろいろ不利な条件が重なった。主戦の武豊騎手が負傷し、急きょの乗り替わりがその1つ。初めてコンビを組んだ戸崎騎手には気の毒な面もあった。さらにレースでは休み明けの影響か、スタートからずっと力んで走っていた。あれでは直線で伸びを欠いてもやむを得ない。7着という結果は度外視していい。

前半でどれだけ脚をためられるか。これが「逆襲」への分岐点となる。武豊騎手は好位付けで2着に敗れた弥生賞後から、ガラッと戦法を変えた。皐月賞(3着)、ダービー(1着)はともに4角14番手。今年2月の京都記念も3角まくりで早めに動いたが、向正面までは後方3番手の11番手に位置した。ポジションを取りにいくより、後方でもリズムよく運んで末脚を生かす形がベスト。

これが名手の導き出した答えなら、前走は正反対の展開。前で掛かって失速。この馬の良さがまったく生きなかった。2、3着のジャスティンパレス、プログノーシスが離れた後方から追い込んだのを見ると展開も向かず。力負けではない。今回はスタンド前発走の2400メートルで余計に折り合いが鍵となる。武豊騎手が乗れないのは痛いが、前走に続いて戸崎騎手が継続騎乗できるのはプラスだ。

天皇賞・秋が不完全燃焼のためダメージは少なく、前走後の立ち上げも早かった。レース3日後の1日からプール調教を再開。9日にはCウッドで7ハロン96秒6の時計を出した。その後も12、16、19日と長めの追い切りを消化。休み明け2戦目の上積みはかなり大きく、上昇度という点では高い点がつけられる。

打倒2強は簡単ではないが、前半でしっかり脚がたまれば、イクイノックスを退けたダービーの再現があっていい。

【ここが鍵】2強にも不安

本当に2強で決まりなのか。天皇賞・秋で圧倒的なパフォーマンスを見せたイクイノックスにあえて不安材料を探すとすれば、あまりにも強かったことだろう。1分55秒2の驚異的なレコードで、前に行った馬を自らかわし、後続の追い上げを完封した。あの激走から初めての中3週だけに、どうしても反動は気になる。陣営が「大丈夫」と判断した以上、信頼すべきだが、上積みという点では疑問が残る。

一方、リバティアイランドは新馬以外すべて牝馬限定戦を使っており、古馬・牡馬一線級とは初めての対戦となる。力は通用しても流れの違いや、道中受けるであろうプレッシャーに耐えられるか。20年の3冠牝馬デアリングタクトも同じ道を歩んで3着。初めて土がついた。1着アーモンドアイ、2着コントレイルの強力布陣だったが、今回もそれに匹敵するメンバーだけに楽ではない。

■ダノンベルーガ二四歓迎材料

天皇賞・秋のダノンベルーガは、中団から脚を伸ばして4着に入った。大外を伸びた2、3着馬には差し込まれたが、これはイクイノックスを射程圏にとらえて勝負した結果で、悲観する内容ではない。なかなか勝ち切れないが、常にG1級相手に善戦しており、2400メートルに延びるのも歓迎だ。モレイラ騎手がドバイターフから4戦連続で騎乗するのも心強い。あとひと押しあればG1に届く。

■ヴェラアズール「らしさ」戻る

昨年の覇者ヴェラアズールが復調気配だ。今春はドバイワールドC13着、宝塚記念8着といいところがなかったが、ひと息入れた京都大賞典は7着ながら、直線強襲してプラダリアの0秒4差まで詰めた。道悪(重)に加え、スローペースで折り合いを欠いたことを考えれば負けて強しの内容だった。ようやく「らしさ」が戻ってきた。ムーア騎手が手綱を取るのも魅力だ。東京芝【2 0 1 0】の巧者ぶりを発揮すれば一発がある。