桜花賞はスピードだけでは通用しない。「体力、瞬発力」に優れた馬が勝つ。

水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、4戦2勝ステレンボッシュ(国枝)に注目する。阪神JF(2着)でG1の速い流れを経験。直線は馬群を割って最速の上がり33秒5をマークした。総合力の高さで逆転なるか、検証した。

23年12月、阪神JFで2着となったステレンボッシュ(6番)、右は1着アスコリピチェーノ
23年12月、阪神JFで2着となったステレンボッシュ(6番)、右は1着アスコリピチェーノ

この時期の3歳戦は、スローペースになることが多い。体力がつき切っておらず、前半から飛ばしていく馬が少ないためだ。だがG1となれば話は別。速い流れの中で、いかに余力を残して追走できるかが鍵。まずはこれまで行われたマイル重賞の前後半800メートルのタイムを比較してみる。

★新潟2歳S

(前47秒7、後46秒1)

★サウジアラビアRC

(前46秒9-後46秒5)

★アルテミスS

(前48秒0、後45秒6)

★阪神JF

(前46秒4-後46秒2)

★クイーンC

(前47秒1、後46秒0)

★チューリップ賞

(前46秒0、後47秒1)

ほとんどが後傾ラップで前半の流れは緩い。チューリップ賞は唯一、前半が速かったが、後半は1秒1も落とした。一方、阪神JFは前後半のタイム差がわずか0秒2。ある程度のペースについていき、しまいもしっかり脚が使える。これが「女王」になるための条件といっていい。

昨年の桜花賞も前半45秒9、後半46秒2(勝ち時計1分32秒1)とタフな競馬だった。スピードだけではない。これに耐えうる体力が必要となる。レースラップからは阪神JF組が有利だが、中でも2着ステレンボッシュは中身が濃い。

初めて経験する速い流れでいつもよりポジションは下がったが、馬群の中でも折り合い、しっかり脚をためることができた。首差先着を許したアスコリピチェーノとは位置取りの差。国枝師が「若い牝馬の感じではなく、落ち着いてどっしりしている」というメンタルも、多頭数のG1では強みになる。

新馬戦は洋芝の札幌1800メートルで勝利。その後はマイルを使っているが、距離の融通性もある。4戦中3戦が最速上がり。瞬発力も世代屈指だ。マイルを1分32秒台で走るスピードに加え、体力、瞬発力と3拍子そろったステレンボッシュに戴冠の資格はある。

【ここが鍵】タフな競馬

阪神外回り1600メートルの桜花賞は、タフな競馬になりやすい。コーナーが大きくスピードは出やすいが、長い直線には急坂が控えており体力も必要。過去5年の前半800メートル通過タイムを見ると45秒台が2回、46秒台が2回(もう1回は47秒台)と結構なペースで流れている。それでいて上がり3ハロンも重馬場の20年を除くと、33秒3、34秒3、34秒1、34秒5の瞬発力勝負に。近年では18年アーモンドアイ、20年デアリングタクト、22年スターズオンアース、23年リバティアイランドがオークスとの2冠を制した。マイル以上でも活躍の見込める総合力の高い馬に注意したい。

■スウィープフィート 瞬発力は互角

阪神JFのスウィープフィートは、出遅れ→掛かって7着。上位とは少し差があったが、その後のエルフィンS、チューリップ賞では折り合い面に進境を見せて、素晴らしい脚を見せている。まだ、前半の走りに課題はあるが、スムーズに追走できれば瞬発力は引けを取らない。

■イフェイオン 勝負根性ある

阪神JF組以外ではイフェイオンに注目。前走フェアリーSは前半46秒6、後半47秒4という先行馬に厳しい流れを、4番手から早めに先頭に立って押し切った。長くいい脚が使えるし、並ばれてもう1度加速したように体力、勝負根性もある。相手は強くなるが、もつれれば上位争いも可能だ。