16日、引退式を行ったイクイノックス
16日、引退式を行ったイクイノックス

天皇賞・秋とジャパンCを連勝したイクイノックスは、有馬記念に出走する可能性もあったそうですが、引退して種牡馬入りとなりました。“秋の古馬3冠”はすべて出るだけでもタフで、全勝するのは本当にすごいことです。3戦ともレースの特性が微妙に違い、それぞれの条件を得意とするスペシャリストとも戦わなければなりません。達成したのは00年のテイエムオペラオーと04年のゼンノロブロイの2頭だけで、もう20年近くも出ておらず、今の競馬界ではほとんど不可能に近いと思います。

00年の有馬記念を制したテイエムオペラオー
00年の有馬記念を制したテイエムオペラオー
04年の有馬記念を制したゼンノロブロイ
04年の有馬記念を制したゼンノロブロイ

私の厩舎にも3戦すべてに出走した馬はいました。たとえば12年のルーラーシップは、良血でもあり「どれかもう1つを勝って種牡馬に」という思いでした。ただ、出遅れ癖があり、もがきながらの3戦になりました。どれも状態は良かったと思いますし、力は見せてくれたんですが…。

14年のエピファネイアは大目標としていた2戦目のジャパンCを勝ってくれて、その後の状態も良く、オーナーサイドと相談して有馬記念へ出走しました。状態は良かったですが、不器用さがあったので中山コースへの不安があったのは確かです。

中山の2500メートルは小回りでゴール前の坂もきつく、器用にさばける走りが求められます。このコースが得意な馬はとことん得意ですから強敵になりますし、枠順にも左右されます。イクイノックスのように負けられない立場の馬はエントリーしづらいと思います。世界ランク1位で種牡馬入りも決まっていたのなら、リスクを背負ってまで出走する理由がなかったのではないでしょうか。

馬券を買う方々にとっては、宝くじ感覚で楽しめるレースだと思います。今年はどんな競馬になるのか、私も注目しています。

角居厩舎の“秋古馬3冠”全3戦出走馬
角居厩舎の“秋古馬3冠”全3戦出走馬