<高松宮記念>◇27日=中京◇G1◇芝1200メートル◇4歳上◇出走18頭

人馬の絆、師弟の絆。ドバイでの日本馬の活躍ももちろん爽快ですが、こういう競馬もいいものです。勝利インタビューでの丸田騎手の涙は、勝ってうれしいよりも、馬と師匠への感謝だったのでしょう。

最大の勝因は、鞍上がナランフレグの力を信じたことです。フルゲート18頭立てのスプリント戦。追い込み馬にとって1枠2番という内枠は、ごちゃつくことも多く、歓迎できたものではなかったと思います。ですが、丸田騎手は小細工せず、いつもの競馬に徹しました。後方で脚をため、末脚にかける。その姿勢が運を呼び込むのです。

馬場は重。全体的に湿っていたため、馬群はばらけました。スタートから後ろにいたナランフレグですが、最初のコーナーまでポツンと1頭で走っているような状態で、直線も最後に少し窮屈になった以外は、内枠とは思えないほどスムーズでした。鞍上が末脚を信じたことで、流れが向いたのだと私は思います。

29戦目で21回目のコンビでした。ここ4戦はすべて上がり最速。特長を熟知していたからこそ、G1でも競馬がぶれませんでした。過去には失敗もあったと思いますが、オーナーと師匠の宗像師が乗せ続けた結果がこの勝利です。フリーになってからも目をかけた師匠、だからこそ勝ちたかった丸田騎手、どちらにとっても何よりもうれしいG1初制覇だったでしょう。

2着ロータスランドは馬がしっかりして、本当に強くなりました。競馬ぶりからして、距離をいったん縮めたらそのままというタイプではなく、またマイルに戻っても大丈夫だと思います。今後が楽しみです。

1番人気レシステンシアはハナを切って6着に敗れました。前後半600メートルずつのラップは33秒4-34秒9。重馬場でしたし、さすがに速すぎました。この馬が行く、という確たる逃げ馬がいなかったことが、レシスには不運だったかもしれません。(JRA元調教師)

高松宮記念 ナランフレグでG1初勝利しガッツポーズで喜ぶ丸田騎手(撮影・森本幸一)
高松宮記念 ナランフレグでG1初勝利しガッツポーズで喜ぶ丸田騎手(撮影・森本幸一)