短距離界の頂上にたどり着いた。荻野極騎手(25)騎乗の8番人気ジャンダルム(牡7、池江)が3番手から抜け出した。直線は早々に先頭。2着馬ウインマーベルの追い上げを首差抑えた。人馬とも初のG1制覇。勝ち時計は1分7秒8。母は02年優勝馬ビリーヴ。20年の時を経て、レース史上初の母子制覇となった。

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デビューから7年。荻野極騎手はその間に清水久厩舎所属からフリーとなり、骨折などのケガにも泣かされた。同期の藤田菜七子騎手や坂井瑠星騎手にも、重賞勝ちは先を越された。「悔しいですし、抜かされた思いがある。でも、追われる身より、追う身の方が強い」。そう信じて、体が万全ではない時も早朝から何頭も調教をつけ、腕を磨いてきた。

コロナ禍前、ある祝勝会に同席した際に荻野極騎手にも何かプレゼントしようと思い、16年4月初勝利時の写真を小ぶりの額に入れて持っていった。少し失礼かと思ったが、本人はあの大きな瞳を輝かせて「ありがとうございます! 重賞勝った時は、パネルをお願いします!」と喜んでくれた。

今年3月、ついにオーシャンSで重賞を勝った。だが、コロナ禍の最中で宴会はお預けに…。「コロナをこんなに恨んだのは初めてです」。悔しげなメールが届いた。「レース後はすぐにビデオを見て反省して、とにかくうまく乗るように、トップ騎手の動きも頭に入れながらやってます」。腐らず努力を続けて、ついにG1ジョッキーになった。初重賞と初G1。ともに相棒はジャンダルム。今回の祝勝会は、さすがに盛大だろう。大きなパネル2枚を持って祝える日を、楽しみにしたい。【木村有三】