日曜のG1香港スプリントを連覇して、世界にその名をとどろかせたカーインライジング(セン5、父シャムエクスプレス)。通算成績は19戦17勝で、G1は6勝目となりました。

カーインライジングは20年9月にニュージーランドで育成場を経営するF・オーレット氏によって生産されました。

この年に生産を開始した同氏は、セリで500ニュージーランド(NZ)ドル(約4万5000円)で落札され、競馬場で5勝を挙げて引退したミッシームーという牝馬を前オーナーから無償で譲り受けて生産者としての一歩を踏み出しました。

ミッシームーは、初年度に中堅種牡馬のシャムエクスプレスと交配されて、翌年に初子となるカーインライジングを出産します。母馬がタダだったのでオーレット氏の出費は交配料の8000NZドル(約72万円)と育成費用のみでした。

カーインライジングは、その素質を認めたD・ヘイズ調教師の息子たちに売却されて香港に渡るのですが、この時の譲渡価格は明らかにされていません。

巷間で囁かれる金額もさほど高いものではなく、カーインライジングが稼ぎ出した賞金(1億2257万5900香港ドル=約24億5100万円)に比べると微々たるものだったのでしょう。

母のミッシームーは2番子にこれも現在、香港で現役生活を送るカーイングローリー(セン4、父ターンミールーズ)を送ったものの、産駒はこの2頭のみ。2番子を出産後に股関節の関節炎を悪化させて跡取りを残さずに死んでしまいました。

オーレット氏は失ったミッシームーとのつながりを探し求めましたが、末娘のミッシームーを産んだ母の8頭の産駒はすべて牡馬(うち7頭が去勢馬)とわかり、牝系を発展させることは望めなくなりました。

カーインライジングのずばぬけた強さが、捨て値で処分された母から始まっていることにサラブレッドの不思議が感じられます。

【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)