美浦の根本康広調教師(69)は1987年(昭62)のダービージョッキー。厩舎を開業してからは弟子の育成に力を注ぎ、5人の騎手をターフに送り出した。3月1日、引退を迎える。
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有名な1枚の写真がある。
メリーナイスが勝った1987年(昭62)のダービー。表彰式の馬上に、根本康広騎手に抱きかかえられた幼い男の子がいる。ほっこりとするショット。競馬の表彰式で、なかなかこのような光景は見られない。
男の子は根本騎手の長男康将さんで、当時3歳。今は根本厩舎の持ち乗り助手として、調教師になった父を支えてきた。39年前を振り返って「メリーナイスとは同い年なんです。状況がのみ込めないまま、馬の上に乗っけられました。おもちゃの刀を手に持ってね。十数万人が入った競馬場の景色は覚えていますよ。レースも見ていました。1頭抜けてきたのをよく見たらおやじで、先頭を走っていた」。メリーナイスは2着をぐんぐん引き離して6馬身差の圧勝劇を演じた。
介護や空港貨物などの職を経て、22歳の時に北海道の育成牧場で馬乗りを始め、約15年前に美浦トレセンに入った。厩舎は3月1日の開催日を最後に解散となる。調教師定年を迎える父に対しては、照れもあるのか「乙」、「8888888」とネットスラングでねぎらう。お疲れさまでした。拍手。おそらく最高の賛辞なのかもしれない。
ラス前となる今週、康将さんは担当馬の1頭であるサザンテイオー(牡3)を出走させる。21日(土)東京6R3歳未勝利戦(芝1600メートル)。前走はゴール前で際どく差されたが、初勝利は近い。「稽古では一番苦しいところで頑張れるように調教してきました。前走も追い出しを待っていい競馬ができました。中1週でも元気に送り出せます」。
サザンテイオーの勝負服は、メリーナイスと同じ「桃、黒鋸歯形」。根本ファミリーの思いを乗せて、ゴールを目指す。【岡山俊明】

