マスカガミ/加茂市
5代目の中野壽夫社長。創業時の蔵の前で、「甕覗」を手に

 1892年(明25)創業時の蔵が、北国街道沿いの問屋街であった当時の風情を今に伝える。蔵が目指す酒は「米をきちんと磨くことから生まれる雑味のない、淡麗でうまみがあり飲み飽きしない酒です」と5代目である中野壽夫社長が説明する。精米歩合に規定のない普通酒でも手を抜かない。

 もうひとつマスカガミが大切にしているのが、他社にはない個性のある製品作りだ。今では蔵の代名詞となっている「甕覗(かめのぞき)」は4代目の中野惣太郎氏の遊び心から生まれた。地元名士たちとの酒宴の席で、大きな陶製の器に酒を入れてひしゃくでサーブしたところ好評で、これを商品化することになった。1987年(昭62)のことだ。今回の「蔵の1本」は、マスカガミのこの2つの柱が融合したものといえる。

 「F40(エフヨンマル) 萬寿鏡」。Fは普通酒、40は精米歩合40%を意味する。使用している酒米は地元産の「越淡麗」。大吟醸酒レベルまで磨いているのになぜ普通酒なのか。その理由は酒米の等級にある。水分が多すぎるという理由で等級外となった大吟醸酒用の越淡麗を使っているからだ。等級外にもさまざまな理由があるが、水分過多は米を磨くときに割れにくいため全く問題はない。いわば「条件のいい規格外」なのだ。

 今年2月に仕込み、3月に搾ったものが11月初旬に発売を迎えた。今までになかったコンセプトの商品は、そのコストパフォーマンスの高さもあり一般消費者のみならず業界内でも反響を呼び、蔵の在庫はほとんどない状態だ。

 試験的に始めた取り組みだったが、今季の酒造りでも同じコンセプトで商品化を目指し県内産の原材料を探したところ、岩船産の「たかね錦」と出会い、この米で2年目の「F40」が醸される。16年バージョンのおいしさにも期待したい。【高橋真理子】

[2015年12月19日付 日刊スポーツ新潟版掲載]