笹口専務は2015年に新潟清酒学校に入学し、現在2年生。現場と学校で酒造りを学んでいる
蒸した米と麹、水を手作業で丹念にすりつぶす「もとすり」作業。自然界の乳酸菌により時間をかけて乳酸が生成されていく
ラベル裏には参加者名が記されている。心地よい酸味によるワイルドな味わいが新鮮だ。1.8リットル3000円、720ミリリットル1500円(税別)
新潟市内の酒屋、飲食店のほか、新潟大日本酒サークル「雪見酒」のメンバーも参加

 1980年代に「淡麗辛口」で一世を風靡(ふうび)した新潟の酒だが、近年では個性を前面に打ち出す他県の酒に押されている一面も否めない。そんな中、県内の若き蔵元たちが新潟清酒復権を目指すべく動き出した。新潟市の笹祝酒造の取り組みを紹介する。

 笹祝酒造6代目の笹口亮介専務は2015年に蔵に戻った。2年目を迎えるとき、笹口孝明社長からタンク1本を任されたことから「チャレンジタンク」が始まった。「新潟の酒は画一的というイメージから脱却する酒を造りたかった」と笹口専務は振り返る。とはいえ「経験が浅く、正直ひとりでいいものを造る自信はなかった」ため酒屋や居酒屋、日本酒愛好家たちとのネットワークを生かし、昨年夏に企画会議を開いた。決定したのが、酒米「亀の尾」を使った「生(き)もと」純米酒を「皆が参加して造る」ことだった。

 「生もと」は酒母(しゅぼ。「酛:もと」ともいう)を造る段階で雑菌繁殖を防ぐために入れる乳酸を、既製品ではなく自然界の力で生成する方法。よく聞く「山廃(やまはい)」も「生もと」だが山廃以上に手間がかかる「もとすり」作業を行う古式製法に挑戦した。さらに20年以上前から地元で契約栽培している伝説の酒米「亀の尾」を使うことで、笹祝らしさにこだわった。商品名やラベルデザインもメンバーで決め、今回仕込んだタンク1本は現在販売されている「無濾過生原酒」と、秋の「無濾過火入れ酒」として出荷する。

 ラベル貼りにスタッフとともに参加した新潟市の居酒屋・五郎古町店の諏佐尚紀店長は「酒造りを体験することでスタッフのレベルアップになりますし、自信をもってお客様に提供できます。県外の方にも飲んでいただきたいですね」と期待を膨らませる。ラベル裏には全員のニックネームが書かれ、ビンの後ろから読める仕掛けも忍ばせた。

 皆の思いを乗せた「笹祝 challenge brew 壱ノ巻 亀の尾生もと純米 無濾過生原酒」を前に笹口専務にどんな人に飲んでほしいか問うと「特にアンチ新潟酒の人と日本酒に初めて出合う人、両極の人たちです」と目を輝かせた。若き蔵元たちの挑戦が、新潟清酒の未来を照らす。【高橋真理子】

[2017年4月22日付 日刊スポーツ新潟版掲載]