戦う姿勢を見せよ! 阪神打線は精彩を欠き、敵地東京ドームで2戦連続の完封負け。日刊スポーツ評論家の権藤博氏(81)は4回の反撃チャンスで見せた中谷将大外野手(27)の振る舞いに、打線全体の覇気のなさを感じ取った。

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阪神は何をやっているんだ、そう感じる場面があった。4回表2死一、三塁で、中谷が打席に入った。2球目がボールとなり、カウント1-1。ここで中谷はじっと三塁ベースコーチを見ていた。2点負けていて、しかも2死だ。この状況で、どんな指示が出るというのか。エンドランのサインが出るわけじゃない。コーチの顔を見るのは、ある種の言い訳だ。スタメンで出た限りは、この場面、自分が打つことに集中しなければならない。これを見たときに、このチームは戦っていないと思った。やるのは選手なんだ。この試合で一番気になった点だ。

抽象的かもしれないが、前日の勝敗がここにつながっている。あの投手戦、私は内容では菅野よりも高橋のほうが良かった、と見ている。それが岡本に1発を食らった。菅野はしぶといし、1発のあるヤツが巨人にはいる。原監督は試合後に、「勝つと負けるのは天と地の差」と話していたが、内容は天と地の差はない。ただ、1点で勝てたことが、この日の初回の流れを生んだ。巨人松原からの3連打は、内野ゴロでもおかしくない打球がヒットになった。犠飛もあったが、やりようのない点の取られ方だった。ガルシアもよく投げていた。

結果的には8点の差がついたが、この2試合、どちらが勝ってもおかしくないゲームだった。巨人と阪神にそれほど差はないと感じた。勝負は先が長いし、どうやって立て直していくか。やはり、戦う姿勢を選手がもたないといけない。そう仕向けるのは、監督の仕事ですよ。今年はクライマックスシリーズがないので、チームを作るために、開き直っていくしかない。どうやって、自分のチームに戦う姿勢を植えつけるか、ですよ。

巨人はオープナーで臨んだり、打順をドンドン組み替えたり、育成上がりでも若手を積極的に起用したり、原監督の思いきりの良さがプラスに出ている。タイガースの投手も負けてはいない。しかし打線に、覇気というものが出ていない。スイング・ザ・バット! バットを振るからホームランも出る。いいスイングだけでは、すまない。

首位巨人と7・5ゲーム差に開いたが、そんなことは言っていられない。力の差はそこまで開いていない。勝つか負けるか、2つに1つ。素材は持っているチームだ。今は戦う姿勢を見せるべきだ。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 4回表阪神2死二、三塁、三直に倒れる中谷。投手田中豊(撮影・河野匠)
巨人対阪神 4回表阪神2死二、三塁、三直に倒れる中谷。投手田中豊(撮影・河野匠)