阪神のクライマックスシリーズ(CS)を占う日刊スポーツ評論家陣による提言企画の「かく戦え」、最終回はタテジマ一筋22年、4番や代打の神様で一時代を築いた桧山進次郎氏(52)です。CS突破に必要な条件として、<1>気持ちの切り替え<2>近本&高橋の復活<3>チームの勢い、の3カ条を挙げて必勝指南です。【取材・構成=松井清員】

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タイガースはどこまで気持ちを切り替えられているのか。これがCSを勝ち抜く大きなポイントになると思います。シーズン最終戦で優勝を逃したショックは大きい。モチベーションは相当、下がったと思います。プロ野球選手が1年間、何を一番の目標に戦うか。それはリーグ優勝からの日本一です。3位以内に入って、日本シリーズを目指すという考えはありません。

タイガースは16年ぶりの優勝が本当にもうあと半歩、それも最後の最後の143試合目に完敗で逃してから、公式戦なくCSを迎えます。スイッチは間違いなく、1回切れているでしょう。最終戦からの中10日間で、さあいくぞ、とどこまで心の火を燃やすことができているのか。リーグ優勝から日本一を目指すヤクルトとの大きな違いがそこにあり、切り替えに全てがかかっているように思います。

幸い2位なので甲子園でスタートできます。観客の上限も緩和されるようなのので、多くのファンが声援してくれるでしょう。下手なゲームはできない、負けられないと緊張感が高まり、これが地の利だと思います。3位の巨人も相当、気持ちが落ちたと思います。しかも借金1で首位とも11ゲーム離されたので、勝ち進んで日本シリーズに行って良いのかという葛藤もあるでしょう。普通にやれば、タイガースが勝つと思います。でも巨人もぶざまな試合はしたくないでしょうから、油断できません。

心の切り替えができたとして、CS突破のキーマンは近本と高橋です。故障明けの主力2人がどこまで復活できるかに、チームの命運がかかっています。1番で最多安打のタイトルを獲得した近本の活躍なくして、今季の進撃もなかったでしょう。優勝争いの佳境、ラスト3試合に出場できていれば、違う結果になっていたかも知れません。初回から打って走って得点して流れを呼べば、一気にベンチも盛り上がるでしょう。

ファーストステージ第1戦の先発が見込まれる高橋は、今季の巨人戦が16回無失点、防御率0・00と圧倒しました。巨人は戦う前から、キツイなと感じているでしょう。故障を感じさせない投球ができれば、終始優位に試合を進めることができるはず。でもこの2人が万全のパフォーマンスができないと、一気に苦しくなる。とても重要なファーストステージ初戦です。

タイガースがCSを勝ち抜くためには、勢いが必要です。だから巨人戦は一気に2勝0敗。3戦目までもつれて、ガンケルも使うようではダメです。ただでさえ、ローテ的にもヤクルトが有利ですからね。ファイナルステージのヤクルト戦は1戦目が勝負で、何としても初戦を取ることです。相手のアドバンテージと合わせて1勝1敗ですが、ヤクルトは実戦間隔が空いている。6-4ぐらいで阪神が優位になると見ています。ただ初戦を落とすと0勝2敗で逆に相手が勢いづき、一気に厳しくなります。CSは競り勝つのではなく、連勝、連勝で日本シリーズまで突き進む。そのイメージが大事だと思います。

気合いの表情でキャッチボールを行う高橋(撮影・前岡正明)
気合いの表情でキャッチボールを行う高橋(撮影・前岡正明)