青柳と今永のエース対決らしく、見応えのある投手戦になった。緊迫感が漂う大一番になったが、勝負を分けたのは、自分たちの野球に徹しきって持ち味を発揮した阪神だった。
まず、両エースのピッチングを振り返ってみたい。立ち上がりに不安がある今永は、真っすぐがやや高めに浮いていたが力で抑え込むピッチングだった。力勝負が際立ったのは3回2死一、三塁で4番大山を迎えた場面。カウントは3-0になったが、得点圏に走者がおり、打ちにいってもいい状況。おそらく大山は甘く入った真っすぐか、高めに浮いた変化球に狙いを絞っていたと思う。そこで投げたのはスライダー。大山はバットを止めようとして中途半端なスイングになってのサードゴロ。ミスショットでもあるが、それだけ今永の真っすぐに威力があったからだと思う。
その今永のピッチングを超えたのが青柳のピッチングだった。コーナーにビシビシ決めるような制球力はないが、とにかく低めに力のある真っすぐを投げ続けた。らしさを見せたのは5回1死一塁。嶺井が投手前に送りバントを転がすと、ファーストへは狙ってワンバウンド送球。青柳は「イップス持ち」で短い距離の送球を苦手にしているが、変に隠そうとせず、しっかりとワンバウンドさせて投げていた。あくまでも勝利を優先させるスタイルはチームを鼓舞させると思う。
そんな青柳を6回で降板させ、終盤はリリーフ勝負。チーム防御率2・67、救援防御率2・39は、ともにリーグトップ。強力投手陣を前面に押し出し、難敵今永から少ない得点でしのぎきる野球で逃げ切った。
少し残念だったのは、DeNAの戦いぶり。青柳を苦手にしているとはいえ、CSの初戦であり、ソトや宮崎はスタメンで起用してほしかった。DeNAは阪神に16勝9敗で大きく勝ち越しており、順位も2位。レギュラー陣をオーダーに据えての戦いに徹した方がいいと思う。そして強力な代打陣がベンチでスタンバイしていながら、勝負をかけるタイミングが遅れてしまっていた。
勝負どころでのバッテリーの攻め方も悔いが残る。唯一の失点となった5回1死満塁。打席に近本を迎え、2-1から内角の真っすぐで勝負。しかし今永は右打者より左打者を苦手にする左腕。状況も満塁であり、内角を厳しく攻めにくい状況だった。ここで甘く入った真っすぐをセンターにはじき返され、痛恨の2点を失った。
青柳は85球で降板。CSファーストステージを勝ち抜けば、それほど無理なくファイナルで先発できる。阪神にとっては、会心の勝利になった。(日刊スポーツ評論家)