強制送還。いかめしい言葉だが、中日担当をしていると年に数回使う。主には、遠征先で打たれた先発投手に即時帰宅を命じることを指す。落合博満監督、森繁和投手コーチ体制の1年目、04年に野口茂樹が課され、その後多くの投手が経験してきた。中日名物? になった感がある。

 今年も4月に若松が、7月にジョーダンと鈴木がそれぞれ遠征先の球場を1人離れた。森監督の判断により、選手に伝えられている。報道では「懲罰」と同意語で扱われているが、実際はどうなのだろうか。

 帰宅した選手は翌日に登録抹消され、早い時間からナゴヤ球場で練習を行うのが通例。球団関係者によると「強く反省を促すとともに、早く次に切り替える意味合いがある」と説明する。昔の学校のような「廊下に立っとれ」や「正座しとけ」とは違う合理的な理由も大きいようだ。

 もう1つ、気になる指導風景があった。中日が連敗中だった7月24日、試合のない月曜日。神宮軟式野球場でのチーム練習中、笠原と小笠原の若手2人がフラフラになるまでノックと走り込みを課された。翌日には試合があるのに。

 当然、首脳陣が決めたことで、友利投手コーチは「2人は最近打たれてモヤモヤ感があった。土の上で1度、芯から汗をかかせようと思った。頭の中もすっきりするから」と説明した。

 笠原は翌日、救援登板して負け投手になった。「筋肉痛になりましたが、試合中は何も感じなかった。影響はなかった」と振り返った。小笠原は5日後、先発して久しぶりに好投した。力強い球がよみがえっていた。パフォーマンスへの影響のほどは不明だが、興味深い中日スタイルだ。【中日担当=柏原誠】