広島鞘師スカウトの目は潤んでいるように見えた。12月10日、広島市内で行われた新入団会見。

ひな壇の松田オーナーの隣に、担当したドラフト1位の小園海斗内野手が座っていた。スカウトにとって、早くから目をつけていた素材を獲得した喜びは何物にも代え難い。「この瞬間を夢見てきたんです。報徳に入ったときからプロに行く素材だった。恐ろしいくらい、想定通りなんです」と語った。

鞘師スカウトも報徳学園出身。だから余計に思い入れが強かった。「報徳の泥臭い野球、体に当てて止めるみたいな野球に、あまり染まってほしくなかった。華があるプレーを磨いてほしいと思っていた」。願い通りに小園は成長し、基本がしっかりした上に華があるという、高校NO・1遊撃手となった。いずれレギュラー田中広を脅かす存在に、と期待している。

ところが鞘師スカウトにとっては、少々複雑な思いもある。田中広は東海大の後輩。スカウトとして担当はしなかったが、いつも目をかけてきた。「(田中)広輔には粘れるだけ粘ってほしい。小園もがんばってほしい」。相反する思いは、スカウトの宿命か。年が明けるとまた、新しい選手を取りにいく。【広島担当 村野森】