10日、日本ハム戦の9回に二塁打を放つ吉田正(撮影・黒川智章)
10日、日本ハム戦の9回に二塁打を放つ吉田正(撮影・黒川智章)

「頂」を目指す。オリックス吉田正尚外野手(27)が、悲願の打撃タイトル獲得に突き進む。

今季は10月10日時点で96試合に出場して、リーグトップの打率3割5分4厘、12本塁打、56打点の成績を誇る。10日の日本ハム戦(札幌ドーム)では今季10度目の猛打賞。121安打もリーグトップを走り、打撃2冠が射程圏内だ。

変動する数字や、着実に加算される数字に「やっぱり家でも(成績を)見ちゃいますよね…。どこかで、気にしている自分がいる。すごく1日が長く感じます」と本音を漏らすが「メンタルの部分は変わりなくできている」と自然体を心掛ける。

昨オフにも「なんとか打撃タイトルを取りたい」と話していたように、シーズン残り1カ月で現実味を帯びている。「(シーズンが)始まる前からすべてで1番になりたいと思っていた。(常に)あのとき、こうしていればよかったなという打席は作らないようにしている」。1打席ずつ、心を整えて向かう。気持ちを落ち着かせ、集中して臨むからこそ、今の数字がある。

最善の準備が、成績に反映される。「全試合出場はこだわって、ですね。1、2年目はケガをしてしまって…。そういう経緯があるからこそ、試合に出続けることは積み重なって最後に評価される数字だと思う」。腰痛に悩まされた過去があるからこそ、椅子に座る姿勢やクッション性にまで気を遣う。自身をいたわる細かな生活面での気づきも野球につながる。「1年1年、どんな状況でも試合に出続ける。プロとしてベストな状態で出続ける。去年、一昨年と(全試合出場が)できたので。(ケガを)防げるところは防ぎながら」。全ては、目の前の1試合、1打席、1球のために-。ケガに苦しんだから気づいたこともある。

好打者のそろうパ・リーグには打撃タイトルを競うライバルはたくさんいる。中でも、自主トレをともにするソフトバンク柳田は10日時点で打率3割3分8厘、26本塁打、70打点としている。

「数字を見れば…。普通にプレーすれば出してくる数字だと思う」

高い次元のしのぎ合いを通じて好打者に通じるものも分かっている。

「3割を残すバッターというのは、誰が見ても『残すだろうな』という打席での待ち方だったり、技術の高いところがある。(偶然で)1回はいけるかもしれないですけど、なかなか運で3割は打てない。高い数字を残す人はピッチャーに対するアプローチができていたりで、結果を出している」

シーズンは終盤を迎える。今季は新型コロナウイルスの影響もあり、不規則な日程。10月、11月も公式戦があり「普段だと(この時期は)残り何試合というところで、あと1カ月近く(試合が)ある。試合数は(120試合と)少ないんですけど、すごく長く感じていて。準備期間が長かったので、最初のスタートが遅くて長く感じるのかもしれない」と状態維持の難しさも明かす。それでも「(最近は)気温が低くなってきた。そういう環境面が変わってきたので、体調面も気を付けながら。寒くなったら肉離れもね。防げるケガはしっかりしていきたい。悔いなく最後までやっていけたら」。

残り24試合。迷わず、強く振る。【オリックス担当 真柴健】