楽天岸孝之投手(36)の制球力の高さにあらためて驚嘆しました。今季は「遊軍」として主にDeNAと西武を取材。楽天の取材は少なめですが、ここまで岸投手の登板を2回取材しています。球界屈指のコントロールに定評のある右腕。現場で見た印象はもちろん、データにも抜群の安定感が見て取れます。

衝撃的だったのが今季初登板の3月30日ロッテ戦(ZOZOマリン)。9回を107球、8安打無四球無失点で12球団一番乗りで完封勝利を飾りました。打者34人に対し初球は30人にストライクという脅威の初球ストライク率88%をマーク。打者全員を5球以内で終える圧巻の内容に報道陣からも「すごいな…」とため息がもれるほど。回の先頭打者に出塁を許したのは1度だけ(9回に安打)で、先発投手の多くが口にする「イニングの先頭を切る」を実践しました。試合後には「やっぱりそこ(回の先頭)で足の速い走者を出すこもなく、ちゃんと打者に集中していけたのは良かったと思います」とコメント。無四球についても「やっぱり無駄な四球ですよね。良くないときはそういうのがあるので。それがなかったのが良かったかな」と冷静に振り返っていました。

また前回取材した13日ロッテ戦(楽天生命パーク)は6回を104球、4安打2四球3失点(自責1)で今季初黒星を喫しましたが、イニングの先頭打者に出塁を許したのは1度だけ(6回に四球)。現場取材はしていませんが6日西武戦(メットライフドーム)は6回を94球、3安打2四球2失点で2勝目。イニングの先頭打者の出塁は2度(2回に本塁打、6回に二塁打)でした。

ここまで3試合で2勝1敗、防御率1・29の好成績。さらに細かく見ると1投球回あたり何人走者を許すかを示すWHIPは0・90。1以下で極めて優秀とされる指標で高水準をマークしています。1試合あたりの四球数を示す与四球率は1・71。さらに「イニング先頭打者の被出塁率」は1割9分の低水準。「無駄な四球を出さず、回の先頭打者を仕留める」という先発に求められる要素をきっちり果たしていることを数字が証明しています。

田中将大投手の復帰でさらに厚みを増した先発陣の中で、今後も信頼度抜群の「精密機械」として安定稼働が期待できそうです。【鈴木正章】

楽天先発の岸(2021年4月13日撮影)
楽天先発の岸(2021年4月13日撮影)