たった1人の野球部員、文理開成(千葉)の高橋空聖(ひろき)主将(3年)と、助っ人9人の夏が終わった。大敗。それでも、試合後の表情には笑みがこぼれた。「廃部の危機から、僕のためにみんなが集まってくれて、本当に感謝したいです」。

 中学1年の2学期から不登校になった。受け入れてくれる高校は少なく、知人の紹介で同校へ進んだ。「自分を変えたい」と思い、未経験ながら野球部に入部。しかし同期、下級生は0人。当初は廃部も危ぶまれた。

 それでも、自分を変えるために続けた。選手として甲子園出場経験のある角田佳昭監督(28)と二人三脚で勧誘と練習に励んだ。母恵子さん(54)も息子の変化を感じ「中学時代と比べると生き生きしていた。私も泥だらけのユニホームを見るのが幸せで泣きながら洗っていた」と振り返る。助っ人が集まったのは今年6月上旬。全体練習は5回だけで野球道具がそろったのは大会前日だった。

 これからは大学を目指し、将来の夢は薬剤師。「野球に出会って人生が変わった。続けてきて本当によかった」。1人でやり遂げた3年間で、一生の仲間と思い出が残った。【桑原幹久】