優勝候補の東海大相模(神奈川)が、花咲徳栄(埼玉)をサヨナラで破り、ベスト4入りを決めた。

 この試合で門馬敬治監督(45)が「監督生活で初めて」という敬遠策を取った。

 2-3で迎えた8回表2死二、三塁。7番笹谷拓海捕手を迎えたところでマウンドに伝令を送った。最速151キロ左腕の小笠原慎之介投手らに敬遠の指示を出したのだ。

 「笹谷君に嫌な感じがあった。『ここしかない』と。ためらっていたら勝負したと思います。でもためらわなかったので」。

 結果は小笠原が9番高橋昂也投手を投ゴロに仕留めピンチ脱出。9回のサヨナラ劇につなげた。

 これまでなぜ敬遠策を取らなかったのか。

 「動かないで何もしない。例えば投手を交代させないで続投させる。でもそれは美談になるかもしれませんが、実は安全策なんです。これまでだったら『小笠原行け』とそのまま勝負させていたでしょう。でも今日は9人の中に僕もいた。今日は先に手を打つんだと選手に言い続けてきた。だから先に動くという意味で敬遠しました」。

 2-3から8、9回に1点ずつを取ってのサヨナラ勝ち。

 9回攻撃前の円陣でナインに「甲子園って意外と逆転勝ちが多いんだよ」と暗示をかけた。「トータルすれば勝ってるチームが逃げ切った方が多いと思うんですが、何か少しでも勝ちにつながるようにと話をしたつもりです」。

 昨夏も優勝候補と言われながら初戦で盛岡大付に敗れた。「1点に負けてきたチーム。1点を取ろう、1点を防ごうとやってきた。今日の勝ちは自信になりました」。

 そして自らは初めての敬遠策の指示。あの場面、敬遠の指示を出し、さらに塁を埋めた後、続けて守備のタイムを取った。そして敬遠策は成功。「次の1点を防ぐ」という監督の執念がナインに乗り移ったかのようだった。

 「ベストゲームです」。

 門馬監督は胸を張った。

【福田豊】(ニッカンスポーツ・コム/高校野球コラム「ふくださんの高校野球が好き」)