第90回記念選抜高校野球大会が23日、甲子園で開幕する。東北勢の一般枠3校は聖光学院(福島)花巻東(岩手)日大山形が出場する。母校を巣立ち、プロの世界に羽ばたいた偉大な先輩からエールが届いた。日本球界一の左腕、西武菊池雄星(26)は花巻東出身。09年春の同大会では準優勝に輝いた。楽天八百板卓丸外野手(21)は聖光学院、ヤクルト奥村展征内野手(22)は日大山形で在学中に夏の甲子園を経験。後輩たちの東北勢初優勝に期待をかけた。

 センバツは、菊池を一躍スターダムに引き上げた大会だ。09年、花巻東は初めてセンバツに出場した。当時、最速149キロ左腕の菊池が鵡川(北海道)との1回戦で完封すると、評価は一気に高まった。9回に2安打を浴びるまでノーヒットノーランの快投。全国デビュー初日にして、怪物左腕伝説が幕を開けた。

 菊池 初戦を勝てば、緊張も解けていくし、勢いもつく。実力以上のものが出てくると思う。まずは初戦を精いっぱい、戦ってほしい。

 一気に決勝まで駆け上がると、清峰(長崎)には0-1で敗れ準優勝。再び東北勢初優勝を狙った同年夏の甲子園は準決勝で優勝した中京大中京(愛知)に敗れた。あと1歩で全国制覇には届かなかった。チームの勝利のために仲間を信じて戦い、そして涙する姿は見る者を熱くさせた。

 菊池 僕らのセンバツは決勝で負けてしまった。楽しめればベストだけど、緊張はするもの。僕も緊張しましたしね。それを受け入れてプレーしてもらえれば。

 花巻東の09年春準優勝が、後の東北勢の勢いを生んだと言っても過言ではない。2010年代に入ると、八戸学院光星(青森)が11年夏から史上初の3季連続準優勝。15年夏には仙台育英(宮城)が決勝で同点の9回に勝ち越され、優勝を逃した。もう、東北勢にとって優勝旗に手が届くところまで来ている。

 菊池 そう簡単なものではないけど、日本一を目指してやってもらって、早く東北勢に初優勝してほしい。それが母校だったら最高ですね。

 八百板は自分が出場できなかったセンバツに対する思いを口にした。「僕も行きたかった。東北代表としての力はあると思う。夏本番前のセンバツでどれだけ戦えるか。まだ見てないけど楽しみ」。自身は高3夏に甲子園を経験し、8強に進出した。夏8連覇のかかった福島大会決勝では日大東北相手に9回に4点差を追い付き、延長11回にサヨナラ勝ちしたのは語り草となっている。「これは負けたと思った。『もう1回やれっ』と言われてもできない。良い意味で開き直れた。僕もヒットを打ったけど、記憶はない」と当時を回想した。

 奥村は、36年ぶりのセンバツ出場を決め、2季連続甲子園出場を果たした母校を激励した。「僕らにはできなかったこと。すごい。とにかく自信を持ってやってほしい。自信があれば、堂々と戦える」。滋賀出身の奥村は山形へ野球留学。県勢初の全国夏4強を目標に掲げ、高3夏の甲子園では主将として有言実行の4強に導いた。東北勢初優勝にあと2勝と迫ったが「今思えば、目標を達成しちゃって満足する部分があったと思う。だからどこか抜けていたところがあった」と準決勝敗退を振り返り、悔しがった。【取材・構成=高橋洋平、古川真弥】