智弁学園(奈良)の2年生エース・西村王雅(おうが)が、敗戦に光をともした。中京大中京の154キロ右腕、高橋宏斗投手(3年)と互角に投げ合い、9回を7安打7奪三振4失点(自責2)。立ち上がりに3点を奪われたが、右肩上がりに調子を上げ、初回以降は3安打に抑え込んだ。延長10回タイブレークでサヨナラ負けしたが、確かな力で聖地に爪痕を残した。

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171センチの小柄な左腕が甲子園で躍動した。交流試合NO・1と呼び声高い高橋との投げ合い。雰囲気にのまれたのは初回だけだ。「足が地に着かないような緊張が大きくて。自分の投球ができなかった」。自身の暴投や連打を浴び、立ち上がりに3失点。だが、自分のミスは自分で取り返した。4回に1点を返し、なお2死満塁。高橋の代名詞の直球を右翼へはじき返し、同点の2点適時打を決めた。「打てるとは思わなかった。緊張がほぐれた」。投打に大奮闘した。

持ち味は強気な投球。誰が相手でも、臆すことはない。小坂将商監督(43)も「継投考たけど、尻上がりに良くなっていた。3回から塁ほとんど出てないですから」と信頼の続投。得意のカットボールも交えながら、4回から5回の先頭まで4者連続三振を奪った。三塁まで走者を進めたのは1度だけ。「自分が高橋投手と投げ合えるとは思っていなかったので、6回終わったくらいから、絶対自分が投げ勝つと思って全力で投げました」。1年で出た昨夏以来の甲子園で、全力勝負を楽しんだ。

敗戦の瞬間、土煙の中で思わず、うずくまった。「3年生と勝ちたくて。絶対自分で勝つと思って、勝てなかった悔しさが出た」。タイブレークの延長10回、西村がバント処理を誤り、満塁。次打者のインフィールドフライに野手の落球が重なり、サヨナラの走者が生還する幕切れ。試合後、大橋誠斗外野手(3年)には「ありがとう」と肩を抱かれた。「もう1回チームを作り直して、春と夏どっちも日本一になりたい」。小さなエースは甲子園に帰ってくることを誓った。

【望月千草】

◆西村王雅(にしむら・おうが)2004年(平16)1月17日生まれ、京都府宇治市出身。御蔵山小では御蔵山スポーツ少年団に所属し、東宇治中では京都リトルシニアに所属。智弁学園では1年春からベンチ入りし、昨夏の甲子園は八戸学院光星(青森)戦の3番手で負け投手となったがマウンドを経験。父基治さんは90年夏の甲子園で平安(現龍谷大平安)のエースとして2勝を挙げた。171センチ、67キロ。左投げ左打ち。